伏眼ふしめ)” の例文
彼女は伏眼ふしめになって、顔を赤らめた。彼女が赤くなったのを見ると、わたしはびっくりして、五体が冷えわたった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
妻は、明い電燈の光がまぶしいように、つつましく伏眼ふしめになりながら、私の方へ横顔を向けて、静に立っているのでございます。が、それに別に不思議はございません。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すぐまたつつましい伏眼ふしめになつて、そのまますれ違つてしまひました。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
やらはれの、伏眼ふしめの旅は果もなし
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ぞ。』といらへぬ、伏眼ふしめして
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
辰子も——これは始終伏眼ふしめがちだったが、やはり相当な興味だけは感じているらしく思われた。俊助は心の底の方で、二人の注意をきつけている説明者の新田が羨しかった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やらはれの、伏眼ふしめの旅は果もなし
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
雛祭、店のあかみに伏眼ふしめして
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
敏子は伏眼ふしめになったなり、あふれて来る涙をおさえようとするのか、じっと薄い下唇したくちびるを噛んだ。見れば蒼白いほおの底にも、眼に見えないほのおのような、切迫した何物かが燃え立っている。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)