仕舞家しもたや)” の例文
両隣りから二階建ての仕舞家しもたやに挟み打ちにされて、妙にその煉瓦の色が黒ずんで見え、さも窮屈さうに頑張つてゐる恰好である。
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
で、お宗旨ちがいの神社の境内、額の古びた木の鳥居のかたわらに、裕福な仕舞家しもたやの土蔵の羽目板を背後うしろにして、秋の祭礼まつりに、日南ひなたに店を出している。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こう云ったのは総髪物々しく、被布ひふを着た一人の易者であった。冷雨ひさめがにわかに降り出したので、そこの仕舞家しもたやの軒の下に、五人は雨宿りをしたものと見える。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小綺麗な仕舞家しもたや暮らしで、十五、六の小女がしきりに格子を拭いていた。この天気に格子を磨かせるようでは、お葉は綺麗好きの、口やかましい女であるらしく思われた。
両側に見好みよげなる仕舞家しもたやのみぞ並びける。市中いちなかの中央の極めてき土地なりしかど、この町は一端のみ大通りにつらなりて、一方の口は行留ゆきどまりとなりたれば、往来少なかりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人数ひとかずは少なくて、姉上と、その父と、母と、下婢かひとのみ、ものしずかなる仕舞家しもたやなりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真中まんなかが抜裏の路地になって合角あいかどに格子戸づくり仕舞家しもたやが一軒。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)