仏龕ぶつがん)” の例文
油がきれたか、格子天井こうしてんじょう仏龕ぶつがんが、パッ、パッ……と大きな明滅の息をついて、そこへヌッと反身そりみに立っているお十夜の影を、魔魅まみのようにゆらゆらさせた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一小間ひとこま硝子がらすを張って、小形の仏龕ぶつがん、塔のうつし、その祖師のかたちなどを並べた下に、年紀としごろはまだ若そうだが、額のぬけ上った、そして円顔で、眉の濃い、目の柔和な男が
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仏龕ぶつがんの虫ばむ音は
秋の一夕 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ふり仰ぐと、堂閣の千ぼんびさしに、びた金色の仏龕ぶつがんが、ほの明るく廻廊を照らしている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いぶかりつつ眸をこらして正面の仏龕ぶつがんほのかな辺りを見ると、厨子ずし位牌いはい金壁こんぺき供華くげ拈香ねんこうなどのおごそかなものの影のうちに、さきの誓書一束が供えられてあるのがひとしお目につく。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)