仇家きゅうか)” の例文
林町に家を借りて、堀部安兵衛どのそのほかの方々と同宿しているのも、じつを言えば仇家きゅうかの動静をうかがうためにほかならない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
彼は、素直すなおに伝右衛門の意をむかえて、当時内蔵助が仇家きゅうか細作さいさくを欺くために、法衣ころもをまとって升屋ますや夕霧ゆうぎりのもとへ通いつめた話を、事明細に話して聞かせた。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
太祖が孝孺を愛重せしは、前後召見のあいだおいて、たま/\仇家きゅうかためるいせられて孝孺の闕下けっか械送かいそうせられし時、太祖そのを記し居たまいてことゆるされしことあるに徴しても明らかなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
仇家きゅうかに討入る以上、たといその場で討死しないまでも、公儀の大法に触れて、頭領始め一同の死はまぬかれぬということも知らないではなかった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
そして、自分も十月の末には江戸へ下るから、面々においてもそれまでに、二人三人ずつ仇家きゅうかへ気づかれぬよう内々で下向げこうせよと言いわたした。それを聞いて、義徒は皆踴躍ゆうやくした。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)