人違ひとちがひ)” の例文
日本では昔から男でも女でも、黒子は人物のイダンチテー即ち人違ひとちがひでないことを証拠立てる役にしか立たなかつたやうである。
東西ほくろ考 (新字旧仮名) / 堀口九万一(著)
「実は、貴女あなたさまにこんなことをお話しすべき筋であるかどうか、それさへ私には分らないのです、もし、人違ひとちがひだつたら、うか御免下さい。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「もしお人違ひとちがひでございましたら御免あそばしまして。貴方あなたは、あの、もしや荒尾さんではゐらつしやいませんですか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
見合せたがひに心中はいま江戸表八山に居る天一坊は多分たぶん此甚之助に相違あるまじくと思ひしが然あらぬていにて其方のせがれ甚之助はうまつき體面かほだち如何有しやと尋ぬるに甚左衞門私し悴は疱瘡はうさうおもく候故其あと面體めんていのこはなはみにくく候と云にさて人違ひとちがひならんと又問けるは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)