あづまや)” の例文
我等はあづまやに入りて、當壚たうろの女をして良酒を供せしめ、續けさまに數杯を傾けて、此自然の活劇をもてあそべり。忽ちポツジヨの聲を放ちて歌ふを聞きつ。
「こんなところで待つてるの変だわ。あとでまた話すのは話すとして、ここぢやなく、あのあづまやの向う側で休んでてくれない? あつちへは誰も行かないから……」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「あゝさうあつて欲しいものですね、ジエィン! 此處にあづまやがある。お掛けなさい。」
われは思慮を費すにいとまあらずして、近きあづまやの内に濳みしに、男はおもてゑみを湛へて閾上よくぢやうに立ち留まりぬ。
そのあづまやは、塀の中に出來たアーチで、常春藤アイヴイが匍つてゐて、中には粗末な腰掛があつた。ロチスター氏は私の爲めに席をあけて、そこに掛けた。しかし、私は彼の前に立つてゐた。
『今晩、九時に、あづまやでお目にかゝりたうございます』
秘密の代償 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
薄片鐵ブリキを塗りて葉となしたる蔓艸つるくさは、幾箇のさゝやかなるあづまやに纏ひ附きて、その間には巧に盆栽の橘柚オレンジ等をならべたり。亭の前なる梢には剥製の鸚鵡あうむまりたるあり。
京野 外つて、すぐ前のあづまやですよ。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)