交驩こうかん)” の例文
『文芸』や『星座』が試みはじめたつつましやかな民衆の文化交驩こうかんの機会が、どうかまたすみやかに恢復されることを願っている。
文芸時評 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
但し、滑稽こっけいなことに、初めは戦争どころか、両軍の将士が相擁してカヴァを酌みかわし、盛んな交驩こうかんが行われたらしい。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
あらゆる同情と交驩こうかんをもって、同じ有色民族たる印度の人々へは温かき友情を示すべきではないか、というのがタチバナ文豪の精神なのだったから
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
天明の頃、肥後の医師に富田太鳳たいほうなるものあり、慷慨こうがいにして奇節あり、高山彦九と交驩こうかんし、つとに尊王賤覇の議を唱う。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼等は泥酔してゐた。一座はまつたく乱れて連絡のない交驩こうかん、唄声が入り乱れてゐるうちに、わづかのキッカケで間瀬が太平に詰め寄つて、貴様は帰れ、と叫んでゐた。
外套と青空 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
両方から手を振って愉快な交驩こうかんをしたが、次の瞬間には練習機はじゃれつくように急昇騰して、旅客機の背中をすれすれに飛ぶと、すいと失速旋回ストーリング・ターンをして、見る間に百米も後方に
旅客機事件 (新字新仮名) / 大庭武年(著)
「彼のために、加盞かさんして、大いに、祝してやろう」はいを挙げて、交驩こうかんしながら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「然うさ。後年ビスマルクに会って、途上交驩こうかんの昔話に及んだら、ビスマルクは些っとも覚えがないと答えたそうだ。それでその芸術家は自分の方が鉄血宰相てっけつさいしょうよりも頭が好いと言っている」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一しょに映画や海や山へ行くではなし、夫婦らしい交驩こうかんということは何一ツやろうとしません。
裏切り (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
酒宴は長くつづいて、いつまでもキリがなく人声がきこえてくるが話の内容は分らないし、果して酒宴の人声であるか、口論だか交驩こうかんだか、そういうこともシカとは見当がつけられない。
ついには楽屋へ遊びに行って漫才師と交驩こうかんするような、学生時代をそんなことで空費したのであるが、あるとき漫才屋さん方に時ならぬ欠勤続出して、舞台がもてなくなる騒ぎ、そのとき
ジロリの女 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
借金とりと交驩こうかんしたり、悪虐無道の因業オヤジと一戦に及び、一泡ふかしたりふかされたり、そして彼の女房は常に嬉々として陣頭に立ち、能なしロクでなしの宿六をこづき廻したりするけれども
オモチャ箱 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
借金とりと交驩こうかんしたり、悪虐無道の因業オヤジと一戦に及び、一泡ふかしたりふかされたり、そして彼の女房は常に嬉々ききとして陣頭に立ち、能なしロクでなしの宿六やどろくをこづきまわしたりするけれども
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)