五更ごこう)” の例文
五更ごこう(午前三時—五時)に至って、張はまた起きた。しもべを呼んで燈火をつけさせ、髪をくしけずり、衣服をととのえて、改めて同宿の孟に挨拶した。
夜に入り夜がけると共に、太い火柱の影が、月の空へ突きとおって見えた。そしてすでに五更ごこうの暁に近いころ……。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
慶応二年二月望。鷲津宣光新馬埒ノ尚志斎ニ閲ス。時ニ侍童ノ齁鼾こうかん雷ノ如ク城鼓正ニ五更ごこうヲ報ズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
原文に鶏鳴露アカトキツユとあるが、鶏鳴けいめい(四更丑刻うしのこく)は午前二時から四時迄であり、また万葉に五更露爾アカトキツユニ(巻十・二二一三)ともあって、五更ごこう寅刻とらのこく)は午前四時から六時迄であるから
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
薨去こうきょの年の夏、或る月の明かな夜、五更ごこうが過ぎて天がまだ全く明けきらない頃、延暦寺えんりゃくじ第十三世の座主ざす法性房ほっしょうぼう尊意そんいが四明が嶽の頂に於いて三密さんみつの観想をらしている時であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こうして五更ごこうも過ぎた頃、大絶壁もようやく越え、三人は山上に辿り着いた。巨岩の雪を手で払い、体をピッタリ寄せ合って、寒気を防ぎながら腰を下ろし、夜の明けるのを待ち受けた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やがて五更ごこう(午前三時—五時)の頃になると、彼は又しずかにちあがって楊の寝床へ近寄って来た。
五更ごこう(午前三時—五時)に至るまで寂然せきぜんとして物音もきこえないので、守る者も油断して仮寝うたたねをしていると、たちまち何物かはいって来たらしいので驚いて眼をさますと
すると、五更ごこうののちから両脚が自然に食っ付いてしまって、もう伸ばすことも縮めることも出来なくなりました。撫でてみると、いつの間にか魚の尾になっているのです。
虎の群れはこころ得て立ち去ったが、夜の五更ごこうの頃に帰って来て、人のように言った。