事相じそう)” の例文
今もしこれらの図にして精密なる写生の画風を以てしたらんには特殊の時代と特殊の事相じそう及び感情はたちまち看客かんかくの空想を束縛し制限すべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ひとしく同一の徳教を奉じてその徳育を蒙る者が、人事の実際においてはまったく反対の事相じそうを呈す。怪しむべきに非ずや。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
けれども此苦悶は意の如くならざる事相じそうに即し、思ひの儘に行かぬ現象の推移に即し、もしくはくあれかし
文芸とヒロイツク (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこで事相じそうの成不成、機縁の熟不熟は別として一切が成熟するのである。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
澄み渡る秋の空、広き江、遠くよりする杭の響、この三つの事相じそうに相応したような情調が当時絶えずわがかすかなる頭の中を徂徠そらいした事はいまだに覚えている。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
実に不可思議千万ふかしぎせんばんなる事相じそうにして、当時或る外人の評に、およそ生あるものはその死になんなんとして抵抗を試みざるはなし、蠢爾しゅんじたる昆虫こんちゅうが百貫目の鉄槌てっついたるるときにても
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
開闢かいびゃく以来今日に至るまで世界中の事相じそうるに、各種の人民相分あいわかれて一群を成し、その一群中に言語文字を共にし、歴史口碑こうひを共にし、婚姻こんいん相通じ、交際相親しみ、飲食衣服の物
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)