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亀井戸
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かめゐど
江東梅園も
臥龍梅と一しよに滅びてしまつてゐるであらう。
水田や
榛の木のあつた
亀井戸はかう云ふ梅の名所だつた為に
南画らしい
趣を具へてゐた。
午後から
亀井戸の
龍眼寺の
書院で
俳諧の
運座があるといふので、
蘿月はその日の午前に
訪ねて来た
長吉と
茶漬をすました
後、
小梅の
住居から
押上の
堀割を
柳島の
方へと連れだつて話しながら歩いた。
萩寺の先にある電柱(?)は「
亀井戸天神近道」といふペンキ塗りの
道標を示してゐた。僕等はその
横町を
曲り、
待合やカフエの軒を並べた、狭苦しい
往来を歩いて行つた。
僕等は「
橋本」の前で円タクをおり、水のどす黒い掘割り伝ひに
亀井戸の
天神様へ行つて見ることにした。名高い
柳島の「橋本」も今は食堂に変つてゐる。
尤もこの家は焼けずにすんだらしい。