乃木のぎ)” の例文
「ナポレオンもまた、風邪をひき、乃木のぎ将軍もまた、閨を好み、クレオパトラもまた、脱糞せりとの事実、これこそは君等のいうリアルならむ。」
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
すなわちこれらの地においては郷名として特に名家の姓を採用したことあたかも大連の児玉こだま町・乃木のぎ町と同じである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
乃木のぎ大将のことなどが急に思い浮んできて、彼はいい気持だった。(さて自殺の方法であるが……)と彼はあごの尖端を指先でつまんで、脳髄を絞ったのである。
仲々死なぬ彼奴 (新字新仮名) / 海野十三(著)
乃木のぎ将軍が一時台湾総督になって間もなくそれをやめた時、彼は健三に向ってこんな事をいった。——
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「眼が潰れたら、軍人になれんぞ、軍人になれなきゃ、東郷大将にも、乃木のぎ大将にもなれんぞ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
向うで宴会を開いて、僕を招待しょうだいしてくれた事がある。何しろYの事だから、床の間には石版摺せきばんずりの乃木のぎ大将の掛物がかかっていて、その前に造花ぞうか牡丹ぼたんが生けてあると云う体裁だがね。
片恋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
最近に三宅雄次郎みやけゆうじろう博士は『東京朝日』紙上で故乃木のぎ将軍の遺書が伯爵寺内正毅てらうちまさたけ氏に由って書き替えられたと公言せられ、また同時に男爵後藤新平ごとうしんぺい氏の私有財産は二千万円に達している
三面一体の生活へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
また、乃木のぎ大将伝を文楽座で人形浄るりとして演じた事があったと記憶する。前者においては愛子は涙の顔を上げて太夫が語ると愛子というハイカラな女は顔を持ち上げて泣き出した。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
忠孝の結晶として神にまつられる乃木のぎ将軍さえ若い頃には盛んに柳暗花明のちまたに馬をつないだ事があるので、若い沼南が流連荒亡した半面の消息を剔抉てっけつしても毫も沼南の徳を傷つける事はないだろう。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
日清戦争中、山地中将が分捕ぶんどりの高価の毛皮の外套を乃木少将に贈ったら、少将は、傷病兵しょうびょうへいにやってしまった。此事を新聞で読んだのが、乃木のぎ希典まれすけに余のインテレストを持つ様になった最初であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
十字架の上にはりつけにされても成功である。こういうのは余りい成功ではないかも知らぬが、成功には相違ない。これはテンポラルな意味で宗教的の意味ではない。乃木のぎさんが死にましたろう。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)