ひた)” の例文
十六人の女たちは、時々彼を奪い合って、互に嬌嗔きょうしんを帯びた声を立てた。が、大抵は大気都姫が、妹たちの怒には頓着なく、酒にひたった彼を壟断ろうだんしていた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は酒にひたりながら、洞穴の奥にうずくまって、一夜中ひとよじゅうよい泣きの涙を落していた。彼の心は犬に対する、燃えるような嫉妬しっとで一ぱいであった。が、その嫉妬の浅間あさましさなどは、寸毫すんごうも念頭にはのぼらなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)