不相變あひかはらず)” の例文
新字:不相変
弟子はかう申しながら、この耳のある、猫のやうな鳥を、氣味惡さうにじろじろ眺めますと、良秀は不相變あひかはらず何時もの嘲笑あざわらふやうな調子で
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
信吾の不意につて以來、富江は長い手紙を三四度東京に送つた。が、葉書一本の返事すらない。そして富江は不相變あひかはらず何時でもはしやいでゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
夕飯前に吾儕が温まりに行くと、湯槽の周圍まはりには大人や子供が居て、多少吾儕に遠慮する氣味だつた。吾儕は寧ろ斯の山家の人達と一緒に入浴するのを樂んだ。不相變あひかはらず、湯はぬるかつた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
マサカ代用教員如きに作曲などをする資格がないといふ規定もない筈だ。して見ると、自分は不相變あひかはらず正々堂々たるものである、俯仰して天地に恥づる所なき大丈夫である。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
小娘こむすめ何時いつかもうわたくしまへせきかへつて、不相變あひかはらずひびだらけのほほ萌黄色もえぎいろ毛絲けいと襟卷えりまきうづめながら、おおきな風呂敷包ふろしきづつみをかかへたに、しつかりと三とう切符ぎつぷにぎつてゐる。……
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『ハッハハ。不相變あひかはらず不減口へらずぐちを吐く! 暑いところをくやつて來ましたね。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)