不慣ふなれ)” の例文
一番砲手も、二番砲手も、皆倒れてしまうと、その後から信号兵が一人現れて、不慣ふなれな砲撃を続けたという話もあった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こう言う岸本の側へは民助兄が立って来て、遠く行く弟のために不慣ふなれな洋服を着ける手伝いなぞをしてくれた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それと申すも拙者は何事も御家風を心得ません不慣ふなれの身の上にて、斯様な役向やくむきを仰付けられ、身に余りてかたじけない事と存じながら、慾には限りのないもので
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かかる人物を政府の区域中に入れて、その不慣ふなれなる衣冠をもって束縛するよりも、等しくぜにをあたうるならば、これを俗務外に安置して、その生計を豊にし、その精神を安からしむるにかず。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
画のなかを覗いてゐると、よし子は丹念に藁葺家根の黒い影を洗つてゐたが、あまりみづが多過ぎたのと、筆の使ひ方がなか/\不慣ふなれなので、黒いものが勝手に四方へ浮き出して、折角赤く出来た柿が
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
田舎から出て来た純一は、小説で読み覚えた東京ことばを使うのである。丁度不慣ふなれな外国語を使うように、一語一語考えて見て口に出すのである。そしてこの返事の無難に出来たのが、心中で嬉しかった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
へえわたくし今日こんにちは非番で、ま別に知己しるべもありませんし、だ当地の様子も不慣ふなれでございますから、道を覚えて置かなければなりません、めて小梅のお中屋敷へまいる道だけでも覚えようと存じて
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)