不心得ふこころえ)” の例文
ただの噂話うわさばなしだったかも知れぬが、そういう不心得ふこころえな者の家には、村の若い衆たちがやってきて、屋根の萱をひきはいだものだそうな。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
諸君はそれに悪化されてはいかん、いいか、こういう不心得ふこころえなやつらを感化して純日本に復活せしむるのは諸君の責任だぞ、いいか、わかったか
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
勉強もなければ発達も仕ない。次第次第しだいしだいなまけ者になり柔弱になり、少しも青年の元気というものが無くなってしまう。不心得ふこころえ千万な事だ。元気は人間の生命といっても好い。
青年の新活動方面 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
『それはみなわたくしの不心得ふこころえめでございます。』と香織かおり面目めんぼくなげにかたるのでした。
どんな汽罐車きかんしゃであるかしれないけれど、そんなことをしてしらぬかおをしているとは冷酷れいこく汽罐車きかんしゃである。わたしがいって不心得ふこころえをさとしてやるから、もし見覚みおぼえがあったらかしなさい。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私はいつもするように茶の間の外の縁側に手をついて、私の不心得ふこころえびた。
財産を無くして、きちがいになる。世の中が思う様にならぬでヤケを起し、太く短く世を渡ろうとしてさま/″\の不心得ふこころえをする。鬼にいじめられて鬼になり、他の小児の積む石を崩してあるくも少くない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
『どう召された。——これや数右衛門、そちまで不心得ふこころえ至極しごくな、この色廓いろざとへ来るのに、青白い顔して、のこのこと来るたわけが何処にあろうぞ。……ても、不粋な奴、ちと、わしの伜の幸右衛門でも見習うては何うか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)