不倫ふりん)” の例文
僕等の恋は不倫ふりんであるかも知れない。それははずかしい。が恋の力はそんな観念を飛び越えさせてしまった。彼女は僕に脱走をすすめる。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
荘田しょうだの恨みの原因が、直也の罵倒ばとうであることも云わなければならない。直也の父が、不倫ふりんな求婚のいやしい使者をつとめたことも云わなければならない。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
遊女制度の不都合さで、金さへ出せば、誰でも客になれたことが、この不倫ふりんな結果を生んだのでせう。
ラッサは今家々の庭に桃の花のまっ盛りである。きょうは幸い埃風ほこりかぜも吹かない。僕等はこれから監獄かんごくの前へ、従兄妹同志いとこどうし結婚した不倫ふりんの男女のさらしものを見物に出かけるつもりである。……
第四の夫から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
両女の中の割合に心雄々おおしきはおっとの如き気風となり、やさしき方は妻らしく、かくて不倫ふりんの愛に楽しみふけりて、永年えいねんの束縛を忘れ、一朝変心する者あれば、男女間における嫉妬しっとの心を生じて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そはおそろしきXなり。みだらにして不倫ふりんなるははのごとく
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
言わずとしれたことですが、相良氏は風間夫人であるすま子さんに不倫ふりんな恋心を持っていたのです。それを風間君は知っていたのです。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、瑠璃子の夫としては、何と云う不倫ふりんな、不似合な配偶だろう。金のために旧知を売った木下にさえ、荘田の思い上った暴虐ぼうぎゃくが、不快に面憎つらにくく感ぜられた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
卑劣ひれつ盗人ぬすっとでも恥じるような手段をめぐらして、唐沢家を迫害し、不倫ふりんな結婚を遂げようと云うような、浅ましいやり方を、恥ずかしいとは思わないのですか。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)