上手うはて)” の例文
勘定にかけちや、向うが上手うはてといふだけだ。ちやんと、先が見えるのさ。五百円のかたに、あいつは、まんまと秘密を残して行きをつた。
秘密の代償 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
わたしは「秋風ぞふく白河の關」の歌を世に出す爲に、これだけの苦勞をしてゐると、どうして、世間には又あなたのやうな上手うはてがある。
能因法師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
若し眞似をしようと思つたら、お手本よりも一枚上手うはてに出て、まんまと自分の肚の藝にしかしてしまふに違ひ無い。さういふひえもんを持つて生れた人だ。
定跡を知らないで上手うはてと指すことは、下駄履きで、日本アルプスへ登るやうなつまらない労力の浪費である。
将棋 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それから忿怒ふんぬを感じた。そしてその次には彼女に打ち勝たう——彼女の性質がどうあらうとも、意地が強からうとも、こつちが上手うはてに出ようといふ決心を抱いた。
〽しばしたゝず上手うはてより梅見返うめみがへりの舟のうた。〽忍ぶなら/\やみは置かしやんせ、月に雲のさはりなく、辛気しんき待つよひ十六夜いざよひの、うち首尾しゆびはエーよいとのよいとの。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何樣なにさま耳新らしい語では有つたが、耳新らしいだけそれだけ、聞き慣れた「油地獄」とか「吉原何人斬」とか言ふものよりも、猶一層上手うはてな、殘酷な舞臺面を持つてゐるらしく思はれた。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
覆衣ヴェールのやうな春霞とよくいふが、彗星はあれで春霞よりもう一枚上手うはてに軽いわけさ
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
けれども要吉の特殊人オリヂナルたるに至つては、自分より遥かに上手うはてであると承認した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
俺には何も彼も解つてゐたんだが、何も知らないつもりで、窓から持出す荷物運びなどを手伝つてゐたんだが、彼女は仲々上手うはての役者で、ほんとうに俺に恋してゐるやうなことを云つたものだ。
女優 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
も一つ上手うはて得體えたいの知れないものだ
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
良因 これは内のお師匠よりも又ずつと上手うはてだ。(感心する。)なるほど、この頃の女はえらいものだ。
能因法師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
心持の上ではさきが上手うはてだと感付いて、忽ち逃足になるところが素敵にうまい。
礼子 まあ、上手うはてね。
歳月 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)