一興いっきょう)” の例文
素人しろうとの私に、なにが書けるわけのものでない。が、素人をむき出しにして、専門家のいわないことをのべてみるのも、一興いっきょうであろうと思い、ペンをとりあげた。
成層圏飛行と私のメモ (新字新仮名) / 海野十三(著)
荒れたものでありますが、いや、茶釜ちゃがまから尻尾しっぽでも出ましょうなら、また一興いっきょうでござる。はははは
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これも一興いっきょうだろうと思ったから、余は女のこいに応じて、例の書物をぽつりぽつりと日本語で読み出した。もし世界に非人情な読み方があるとすればまさにこれである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
懇談こんだんくださる場所は、いちおう本館の各室をそれぞれ割り当てておきましたが、天気もこんなにいいことでありますし、森蔭もりかげや草っ原をご利用くださるのも一興いっきょうかと思います。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そこで、せっかく出むかえてくれた賊を、失望させるよりは、いっそ、そのさそいに乗ったと見せかけ、二十面相の知恵の程度をためしてみるのも、一興いっきょうであろうと考えたのでした。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
畑には西瓜すいか唐茄子とうなすが蔓を這わせて転がっている。そのなかで甕から首を出して鼻唄を歌っていると、まるで狐に化かされたような形であるが、それも陣中の一興いっきょうとして、その愉快は今でも忘れない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
諸君は、こころみにそのなぞをといてごらんなさるのも一興いっきょうでしょう。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「それも旅の一興いっきょう。」
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「これも一興いっきょうだ」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)