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ろしゆく
将に大雨を下さんとす、明夜尚一回
露宿をなさざれば人家ある所に
至るを
得ず、
余す所の二日間尚如何なる
艱楚を
嘗めざるべからざるや、
殆ど
予測するを得ず
相憐んで曰く
泣面に
蜂とは其れ之を
云ふ乎と、午後五時井戸沢山脈中の一峯に
上り
露宿を
取る、高四千五百尺、
顧みれば前方の山脈其
中腹の
凹所に白雪を堆くし、皚々眼を射る
大に
愉快の色を
現はし、
且つ未だ
耳にだもせざる「ぶらんでー」の
醇良を味ふを得、
勇気頓に百倍したり、
実に其
愉快なる人をして
雪点近き山上にありて
露宿するなるかを
忘れしむ。