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たきたて
勘「はい/\
有難え/\、それを聞けば
直に死んでも
宜い、ヤア、有難えねえ、サア死にましょうか、唯
死度くもねえが、
松魚の刺身で
暖けえ
炊立の
飯を
喫べてえ」
婆「
旨えものは有りませんが、
在郷のことですから
焚立の御飯ぐらいは出来ます、畑物の
茄子ぐらい煮て上げましょうよ」
地獄で
佛に
逢たる心地なし世にも
情あるお
詞かなと悦び
臺所へ到りて
空腹の事ゆゑ急ぎ
食事せんものと見れば
何れも五升も入べき
飯櫃五ツ
竝べたり
飯も
焚立なりければ吉兵衞は大きに
不審し
此樣子では
大勢の暮しと見えたれども此程の大家に男は
留守にもせよ女の五人や三人は
居べきに夫と見えぬは