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せつけん
それは唯はた目には
石鹸や
歯磨きを売る
行商だつた。しかし武さんは
飯さへ食へれば、
滅多に荷を
背負つて出かけたことはなかつた。
青い山をひつ
掻いて見給へ。
石鹸が幾つもころげ出すだらう。
自分の
氣晴しや
保養や、
娯樂もしくは
好尚に
就いてゞすら、
斯樣に
節儉しなければならない
境遇にある
宗助が、
小六の
爲に
盡さないのは、
盡さないのではない、
頭に
盡す
餘裕のないのだとは
「
成る
丈節儉しなくちや
不可ない」と
諭した。