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しろしやつ
今日は白地の
浴衣を
已めて、
背広を着てゐる。然し決して
立派なものぢやない。光線の圧力の野々宮君より
白襯衣丈が増しな位なものである。
襟も
白襯衣も
新らしい
上に、流行の
編襟飾を
掛けて、浪人とは
誰にも受け取れない位、ハイカラに取り
繕ろつてゐた。
平岡は、
白襯衣の
袖を
腕の
中途迄
捲り
上げて
派手好きな鴈治郎は、
刃傷の場で思ひきり派手な
往き方をして舞台を巧く
引つ
浚へて
往かうと註文をつけてゐたらしかつた。で、
火熨斗をあてた
白襦袢のやうに、真青に
鯱子張つて舞台へ出た。