脊負しよ)” の例文
さうして座敷ざしきすみ瞽女ごぜかはつて三味線さみせんふくろをすつときおろしたとき巫女くちよせ荷物にもつはこ脊負しよつて自分じぶんとまつた宿やどかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これ甲斐かひくにから反物たんもの脊負しよつてわざ/\東京とうきやうまでをとこなんです」と坂井さかゐ主人しゆじん紹介せうかいすると、をとこ宗助そうすけはういて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さあ、みんなかへれ。してたれ宿屋やどやつて、わたし大鞄おほかばん脊負しよつてもらはう。——なかにすべて仕事しごと必要ひつえう道具だうぐがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからお父様は、着換きがへだの足袋だの、学校道具だのを風呂敷ふろしきに包んで、愚助に脊負しよはせて、お寺へつれて行きました。それを見た和尚様は、にこにこ笑ひながら
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
急に呑氣な餘裕家よゆうかになつた樣な氣がする。今まで脊負しよつてゐた重荷をおろしてしまつた樣な氣がする。外國じみた別世界へ來て、自分も亦別な人間の洗禮を受けた樣だ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
誰れが来て無理やりに手を取つて引上げても己れは此処ここにかうしているのが好いのだ、傘屋の油引きが一番好いのだ、どうで盲目縞めくらじま筒袖つつそでに三尺を脊負しよつてて来たのだらうから
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ナニよろしうがす、わたしひとり脊負しよつきます、なるたけ入費ものかゝらぬはうよろしうがすから。「いかえ。金「エヽうがすとも。と早桶はやをけ脊負しよ焼場鑑札やきばかんさつもらつてドン/\焼場やきばまして。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お前が駈け付ける迄に、背中へ脊負しよつたんだよ」
そんぢや大層たえそ厄介やつけえけてまねえな、そんぢやこめばかし脊負しよつてつて明日あしたでもまた南瓜たうなすはとりにるとすべえよ、そんぢや
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
織屋おりや御前おまへさうして脊負しよつて、そとて、時分じぶんどきになつたら、矢張やつぱ御膳ごぜんべるんだらうね」と細君さいくんいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かばん脊負しよつてたのは木樵きこり権七ごんしちで、をとこは、おうら見失みうしなつた当時たうじ、うか/\城趾しろあと徉徜さまよつたのを宿やどつれられてから、一寸々々ちよい/\ては記憶きおくうちかげあらはす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まだ學生でありながら、教會を一人で脊負しよつてゐるかの樣にがんばつて、定まりの集會に出ないと云つては會員を責め、出るとまた、態度が不謹愼だと云つてはそれを責める。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
何故なぜでもしない、れが無理むりやりにつて引上ひきあげてもれは此處こゝうしてるのがいゝのだ、傘屋かさや油引あぶらひきが一番いちばんいのだ、うで盲目縞めくらじま筒袖つゝそで三尺さんじやく脊負しよつてたのだらうから
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
磔柱はりつけばしら脊負しよつた、血だらけな男で——」
おつたも不快ふくわい容子ようすをしながら南瓜たうなすねぎとを脊負しよつてべつくちくでもなく、たゞ卯平うへい二言ふたこと三言みこといつてもうどうでもいといふ態度たいどつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その時分じぶんには丁度ちやうどきう正月しやうぐわつるので、一先ひとまづ國元くにもとかへつて、ふるはるやまなかして、それからまたあたらしい反物たんもの脊負しよへるだけ脊負しよつてるのだとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
渠は一方に詰らないものを脊負しよひ込んだやうな氣もするが、どうせ妻子と別居するとすれば、他の下宿屋生活もいやだし、また、一方には、まだよく分らないこの女の素性を究めて見たくもあつた。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
脊負しよつて、手前てめえ暫らく鈴を賣つて歩くんだ
それへ東窓ひがしまどれる朝日のひかりが、うしろから射すので、かみ日光さかいの所がすみれ色にえて、きたつきかさ脊負しよつてる。それでゐて、かほひたひも甚だくらい。くらくて蒼白あをしろい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)