真直まつすぐ)” の例文
旧字:眞直
与兵衛はさう考へながら、山の頂から真直まつすぐに川の方へ、の枝につかまりながら、つるすがりながら、大急ぎに急いで降りて行きました。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
引返して馬車を雇はうと思つたがこの停車場ステエシヨンには馬車が居ないと曙村が云ふ。路普請みちぶしんをして居る土方に聞くと、このみち真直まつすぐけ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ひげやしてゐる。面長おもながやせぎすの、どことなく神主かんぬしじみた男であつた。たゞ鼻筋が真直まつすぐに通つてゐる所丈が西洋らしい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しんとしたアカシヤの緑葉の並木の中には、狭いレエルを持つた一条ひとすぢの連頭路が真直まつすぐに真直に続いてゐるのが見わたされた。
アカシヤの花 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
方違神社から真直まつすぐに田圃の中を通つた道を町へ入つて来ますと、其処そこ大小路おほせうぢと云つて堺で一番広い町幅を持つた東西の道路になつて居ます。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
よ/\、おなまぼろしながら、かげ出家しゆつけくちよりつたへられたやうな、さかさまうつばりつるされる、繊弱かよは可哀あはれなものではい。真直まつすぐに、たゞしく、うるはしくつ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『ミユンヘン人は何でも真直まつすぐに物云ひますから、先生も喧嘩けんくわなすつちやいけませんよ』などと云つたことがある。
日本媼 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
川蒸汽は蔵前橋くらまへばしの下をくぐり、廐橋うまやばし真直まつすぐに進んで行つた。そこへ向うから僕等の乗つたのとあまり変らない川蒸汽が一艘矢張やはなみを蹴つて近づき出した。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
向河岸むかうがしへつくと急に思出おもひだして近所の菓子屋くわしやを探して土産みやげを買ひ今戸橋いまどばしを渡つて真直まつすぐな道をば自分ばかりは足許あしもとのたしかなつもりで、じつ大分だいぶふら/\しながら歩いて行つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けだし人は生れながらにして理性を有し、希望を蓄へ、現在に甘んぜざる性質あるなり。社会の夤縁いんえんに苦しめられず真直まつすぐに伸びたる小児は、本来の想世界に生長し、実世界を知らざる者なり。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「これを真直まつすぐにおきよ、さうすると自然ひとりでにワシントンのおうちの前へ出ら。」
つたへていふ、白髪はくはつ老翁らうをうへいをもちてなだれにくだるといふ。また此なだれ須川村の方へ二十町余の処真直まつすぐつき下す年は豊作ほうさく也、菖蒲村の方へなゝめにくだす年は凶作きやうさく也。其験そのしるしすこしたがふ事なし。
亭乎すらりとした体を真直まつすぐにして玄関から上つて行くと、早出の生徒は、毎朝、控所の彼方此方かなたこなたから駆けて来て、うやうやしく渠を迎へる。中には態々わざわざ渠に叩頭おじぎをするばつかりに、其処に待つてゐるのもあつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
寂しけど煌々と照るのぼり坂ただ真直まつすぐにのぼりけるかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
マス君はしば/\真直まつすぐな鋭い剣を送つたが、たま/\其れを避け外したカ君の右腕うわんから血が流れた。なり深い負傷であるにかゝはらずカ君は戦闘を続けた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此女は素直すなほな足を真直まつすぐに前へはこぶ。わざと女らしくあまへたあるかたをしない。従つて無暗に此方こつちから手を貸す訳に行かない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
長く真直まつすぐに延びて、やつとひろびろした青空に出たやつが、折角枝を張つて見ると、幹が細く長いために、風などに逢つて、思ひきりいぢめられて
樹木と空飛ぶ鳥 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
今はふさがつてゐるけれど、四五日てばどれかが明くといふことである。かへりみちで、日本媼の息子は、『民顕ミユンヘン人は何でも真直まつすぐに物いふから喧嘩けんくわしてはいけませんよ』
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
と、画工ゑかきさん、三うらさんがばた/\とた、その自動車じどうしやが、柴小屋しばごやちいさく背景はいけいにして真直まつすぐくと、吹降ふきぶりいとつたわたしたちの自動車じどうしやも、じり/\と把手ハンドルたてつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
半町四方程をつつんで真直まつすぐに天を貫く勢で上つて居ました。火の子はまかれる水のやうに近い家々の上へ落ちるのでした。女中の顔も、丁稚でつちの顔も金太郎のやうに赤く見えました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
唐突だしぬけに訊いてみるがい。愕堂氏は屹度鉛筆のやうに身体からだ真直まつすぐにして
松は尖つた岩の中から、真直まつすぐに空へ生え抜いてゐる。そのこずゑには石英せきえいのやうに、角張かどばつた雲煙うんえんよこたはつてゐる。画中の景はそれだけである。しかしこの幽絶な世界には、雲林うんりんほかに行つたものはない。
支那の画 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其処そこを辞して電車の通つて居るメエルちやう真直まつすぐくと、三角に成つた街の人家に打附ぶつつかつてみちにはかに細く左右に分れ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
にほひでせう」と云つて、自分のはなを、はなびらそばつてて、ふんといで見せた。代助は思はずあし真直まつすぐつて、うしろの方へらした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちながら、すつとしろもすそ真直まつすぐ立靡たちなびいて、なかばでふくらみをつて、すぢくぼむやうに、二条ふたすぢわかれようとして、やはらかにまたつて、さつるのが、かたえ、頸脚えりあしえた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
乗合馬車、乗合自動車の渦の中を真直まつすぐに横ぎり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
角上つのかみりた時、かつた。士官学校のまへ真直まつすぐ濠端ほりばたて、二三町ると砂土原さどはら町へがるべき所を、代助はわざと電車みちいてあるいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とりけものか、こゝにバサリとづくるものがんで、案山子かゝし呼出よびだされたのであらう、とおもつたが、やがてそれふたつがならんで、真直まつすぐにひよいとつ、と左右さいうたふれざまに、またばさりと言つた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
真直まつすぐに本堂へ向ふ半町ばかりの路は、草だらけでだれも掃除の仕手が無い。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
真直まつすぐに横断すればいいのである。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
野々宮が此所こゝうつつてから、三四郎は二三度訪問した事がある。野々宮の部屋はひろい廊下をあたつて、二段ばかり真直まつすぐのぼると、左手ひだりてに離れた二間ふたまである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
真直まつすぐに広場を横断するには
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
其内そのうちに時は段々うつつた。代助は断えず置時計のはりを見た。又のぞく様に、のきからそとあめを見た。あめは依然として、そらから真直まつすぐつてゐた。そらまへよりも稍くらくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)