温泉をんせん)” の例文
温泉をんせんかうとして、菊屋きくや廣袖どてら着換きかへるにけても、途中とちう胴震どうぶるひのまらなかつたまで、かれすくなからずおびやかされたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
湯原ゆがはら温泉をんせんぼくになじみのふかところであるから、たとひおきぬないでもぼくつて興味きようみのないわけはない、しかすでにおきぬつたのちぼくには
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なほつねに見ざる真景もがなと春のなかばわざ/\三国嶺みくにたふげにちかき法師嶺ほふしたふげのふもとに温泉をんせんやどりそのあたりの雪を見つるに、たかみねよりおろしたるなだれなどは
温平ゆのひら温泉をんせんの話もしたまひて君がねもごろ吾は忘れず
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
……とその大湯おほゆ温泉をんせんで、おしろひのはなにもない菜葉なつぱのやうなのにしやくをされつゝ、画家ゑかきさんがわたしたちにはなしたのであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こと自分じぶん投宿とうしゆくした中西屋なかにしやといふは部室數へやかずも三十ぢかくあつてはら温泉をんせんではだい一といはれてながらしか空室あきまはイクラもないほど繁盛はんじやうであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
○かくて次の日やぶつの橋*8といふをわたりて湯本に宿り、温泉をんせんよくし、次の日西の村々を見て上結東かみけつとう村に宿り、猿飛橋をわたり、その日見玉村にやどりて家にかへれり。
一體いつたいあのへんには、自動車じどうしやなにかで、美人びじん一日いちにちがけと遊山宿ゆさんやど乃至ないし温泉をんせんのやうなものでもるのか、うか、まだたづねてません。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この温泉をんせんはたして物質的ぶつしつてきぼく健康けんかう效能かうのうがあるかいか、そんなことわからないがなにしろ温泉をんせんわるくない。すくなくとも此處こゝの、此家このや温泉をんせんわるくない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なにかな、御身おみ遠方ゑんぱうから、近頃ちかごろ双六すごろく温泉をんせんへ、夫婦ふうふづれで湯治たうぢて、不図ふと山道やまみち内儀ないぎ行衛ゆくゑうしなひ、半狂乱はんきやうらんさがしてござる御仁ごじんかな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東京とうきやうきやくれてけといふから一緒いつしよると下手へたくせれないとおこつてことれないとつておこやつが一ばん馬鹿ばかだといふこと温泉をんせん東京とうきやうきやくにはういふ馬鹿ばかおほこと
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わすれもしない、温泉をんせんきがけには、夫婦ふうふ腕車くるまとほつた並木なみきを、魔物まものうです、……勝手次第かつてしだいていでせう。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今夜こんやきよんだ温泉をんせんはひられるとおもひながら、この好時節かうじせつ旅行りよかうせんとは。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あのとほ呼立よびたる——成程なるほどおもへば、何時いつ温泉をんせん宿やどて、何処どことほつて、じやうぬまたかおぼえてらぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この温泉をんせんるおきやくさんのうちじア旦那だんなが一とうだ。』とおほげさにめそやす。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
五月十三日ごぐわつじふさんにち午後ごごである。こゝろざした飯坂いひざか温泉をんせんくのに、汽車きしや伊達驛だてえきりて、すぐにくるまをたよると、三臺さんだい四臺よだい、さあ五臺ごだいまではなかつたかもれない。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五月朔日ごぐわつついたちことなり其夜そのよ飯坂いひざか宿とまる。温泉をんせんあればいり宿やどをかるに、土座どざむしろいて、あやしき貧家ひんかなり。ともしびもなければ、ゐろりの火影ほかげ寢所しんじよまうけて云々うん/\
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
飯坂いひざかと、温泉をんせんは、はしひとへだてるのであるが、摺上川すりかみがはなかにして兩方りやうはうから宿やどうらの、小部屋こべや座敷ざしきも、おたがひふのが名所めいしよともふべきである……と、のちいた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いへのかゝり料理れうり鹽梅あんばいさけあぢ、すべて、田紳的でんしんてきにて北八きたはち大不平だいふへいしかれども温泉をんせんはいふにおよばず、谿川たにがはより吹上ふきあげの手水鉢てうづばち南天なんてん一把いちは水仙すゐせんまじへさしたるなど、風情ふぜいいふべからず。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おや/\前勘まへかんか。いなうでない。……とくいち三等さんとう相場さうばづけである。温泉をんせんあめたなごころにぎつて、がものにした豪儀ごうぎきやくも、ギヨツとして、れは悄氣しよげる……はずところを……またうでない。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)