暴露ばくろ)” の例文
いま敵國てきこくふかをかして、邦内はうない騷動さうどうし、士卒しそつさかひ(一七)暴露ばくろす。きみねてせきやすんぜず、くらうてあぢはひあましとせず。百せいめいみなきみかる。
で僕に忌憚きたんなく云わせると、大尉どのの結論は、本心の暴露ばくろではなく、何かこう為めにせんとするところの仮面結論かめんけつろんだと思うのだ。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
沈痛ちんつう悲慘ひさん幽悽ゆうせいなる心理的小説しんりてきせうせつつみばつ」は奇怪きくわいなる一大巨人いちだいきよじん露西亞ロシア)の暗黒あんこくなる社界しやくわい側面そくめん暴露ばくろしてあますところなしとふべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ちょうどそれと同じなんです。あの路を通っている人を見るとつい私はそんなことを考えるんです。あれは通る人の運命を暴露ばくろして見せる路だ
闇の書 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
今や「黒トカゲ」は悪魔の本性を暴露ばくろした。彼女は一匹の黒い鬼の形相でスックと立ちはだかると、女性とは思われぬはげしい口調で指図を与えた。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かく考えると齷齪あくせくとして、あるものを無しと言い、無いものを有ると見ても、とうてい永続せぬものである。早晩その真相は暴露ばくろされるものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しか蘿月らげつは今よんどころ無く意見やくの地位に立つ限り、そこまでに自己の感想を暴露ばくろしてしまふわけにはかないので、の母親に対したと同じやうな
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
彼女は津田が真面目まじめくさってその後を訊く事を非常に恐れた。それは夫婦の間に何らの気脈が通じていない証拠を、お秀の前に暴露ばくろするに過ぎなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乙女おとめの如く感傷的で、彼自身の制御さえ覚束おぼつかなく、心の弱さをことごとに暴露ばくろしてはばからなかったのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
たとい自分の無実が証明されるとしても、こんな女のかかり合いで奉行所の審問しんもんを受けたなどと云うことが世間に暴露ばくろすれば、長い一生を暗黒に葬らなければならない。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かくしてわがくに大平洋側たいへいようがは沿岸えんがん非局部性ひきよくぶせい大地震だいぢしんおこ海洋底かいようていせつしてゐるわけであるが、しかしながら其海岸線そのかいがんせん全部ぜんぶ津浪つなみ襲來しゆうらい暴露ばくろされてゐるわけではない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
やつひとどんぶり、それでも我慢がまんたひらげて、「うれしい、お見事みごと。」とめられたが、歸途かへりみちくらつて、溝端どぶばたるがいなや、げツといつて、現實げんじつ立所たちどころ暴露ばくろにおよんだ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
バイロンが英国を去る時の詠歌の中に『誰か情婦又は正妻のかこちごとや空涙そらなみだ真事まこととして受くる愚を学ばむ』と言出でけむも、実に厭世家の心事を暴露ばくろせるものなるべし。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
当時評判の高かった卑猥ひわいな小説は多く、大小を問わずあらゆる兵営内の腐敗を暴露ばくろしていた。
人生は何事をもさぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句をろうしながら、事実は、才能の不足を暴露ばくろするかも知れないとの卑怯ひきょう危惧きぐ
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
弁円がこの事件をもって、自己の復讐に利用しようとする肚だくみ以上に、天城四郎は、そういう社会的な秘密を暴露ばくろしてみることに、悪魔的な興味を多分におぼえるのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしてそれと共に、この嘘を暴露ばくろさせてやりたい気が、刻々に強く己へ働きかけた。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
マルソオは、呼吸いきをするかしないかで、室長の言葉に聴き入っている。それは、どこまでも当り前だとは思いながら、彼は、ある秘密の暴露ばくろをおそれるように、ふるえているからだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
現実暴露ばくろ、無解決、平面描写、劃一かくいつ線の態度等の言葉によって表わされた科学的、運命論的、静止的、自己否定的の内容が、その後ようやく、第一義慾とか、人生批評とか、主観の権威とか
清左衛門を魔道に引き入れ、密貿易を犯させて、彼等自身が各々の大慾望を遂げてしまうと、長崎奉行役替りの時期が来て、その罪行が暴露ばくろするのを怖れ、清左衛門一人に、たくみに罪をなすりつけ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
……彼女は遂に発狂して、叔父の家の倉庫の二階に監禁かんきんさるるに到った。ここに於て彼女を愛していた名探偵青ネクタイ氏は憤然としてち、この事実の裏面を精探すると、驚くべき真相が暴露ばくろした。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それにもかかわらず、平田一郎という陰険いんけんな男は、一体どこから見ているのか、実にくわしく、実に正確に、夫婦間の秘事ひじを手紙の上に暴露ばくろしてある。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこまでに自己の感想を暴露ばくろしてしまうわけには行かないので、その母親に対したと同じような、その場かぎりの気安めをいって置くより仕様がなかった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なん醉漢すいかん心中しんちう暴露ばくろするのみようなる。さらすゝんで我妻わがつま我娘わがむすめだんじ、むすめ婬賣いんばいすることまで、慚色はづるいろなくづるにいたりては露國ロコク社界しやかいおどろくべきにあらずや。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
其後そのご山津浪やまつなみのこした土砂どしや溪流けいりゆうのために次第しだいさらはれて、ふたゝ以前いぜん村落地そんらくち暴露ばくろしたけれども、家屋かおく其處そこからあらはれてなかつたので、山津浪やまつなみ一村いつそん埋沒まいぼつしたといふよりも
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すなわち人にはあかせられぬが、おのれが心にあかし、あるいは天にあかして恥ずべきことでない秘密ならば、暴露ばくろしたところでこれまた一場の笑話となるか、愛嬌談あいきょうだんとなるにとどまり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
一般の愚蒙ぐもうと戦い、現時の勝利者らの凡庸ぼんようさを暴露ばくろし、馬鹿者どもの手中に渡されてる無名孤独な芸術家を擁護し、服従をのみ知ってる人々の精神に帝王の精神を課し得る者が
初代との関係ばかりではなく、その外の同じ様な事実をも、はなはだしいのは、一人物との間にかもされた同性恋愛的な事件までをも、恥を忍んで、私は暴露ばくろしなければなるまいかと思う。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何も異性間に不人望な主人をこの際ことさらに暴露ばくろする必要もないのだが、本人において存外な考え違をして、全く年廻りのせいで細君に好かれないのだなどと理窟をつけていると
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それをいうと、柴田勝家しばたかついえ遺臣いしんという、自分の前身ぜんしん暴露ばくろする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし僕の一念は何としてもセントー・ハヤオの不思議な通信によって暴露ばくろした事実をつき留めずには居られませんでした。僕はそれから約一年を辛抱しんぼうしました。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は今まで、河野という男は、理智ばかりで出来上った、鉄の様な人間かと思っていましたのに、このうろたえ様はどうでしょう。彼はきわどい所で弱点を暴露ばくろしてしまいました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自分の思想を暴露ばくろすることを彼女は恥ずかしがったであろう。ただ彼女がもってたのは、自分以外の者にはだれにもほとんどわからない小さな控え帳——ごく細かな備忘録だけだった。
ただひとの暗黒面を観察するだけで、自分と堕落してかかる危険性を帯びる必要がないから、なおの事都合がいいには相違ないが、いかんせんその目的がすでに罪悪の暴露ばくろにあるのだから
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あらゆる妄動もうどうと醜態を世に暴露ばくろしてしまった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
既に靴の跡によって嫌疑けんぎの深い潮十吉であるが、この一巻の映画によって、彼の正体が暴露ばくろするのではあるまいか。赤外線男は潮十吉か。或いは赤外線男の合棒あいぼうでもあるか。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
英国風を鼓吹こすいしてはばからぬものがある。気の毒な事である。おのれに理想のないのを明かに暴露ばくろしている。日本の青年は滔々として堕落するにもかかわらず、いまだここまでは堕落せんと思う。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは、近視眼きんしがんの漢青年を利用したパノラマでしかなかったことが暴露ばくろされたのだった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
言いにくいと申すより言うをあえてすべからざる事かも知れない。墓参り事件を博士が知っているならばだけれど、もし知らんとすれば、余は好んで人の秘事を暴露ばくろする不作法を働いた事になる。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)