日本橋にほんばし)” の例文
昔は不義の男女を罰するために日本橋にほんばしたもとさらし者にして置いた。それと同じような事さ。どうだろう。今の読者には受けないか知ら。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まへのは砲兵工廠はうへいこうしやうけたときで、つゞいて、日本橋にほんばし本町ほんちやうのきつらねた藥問屋くすりどひやくすりぐらが破裂はれつしたとつたのは、五六日ごろくにちぎてのこと
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しろまつかげきそうな、日本橋にほんばしからきたわずかに十ちょう江戸えどのまんなかに、かくもひなびた住居すまいがあろうかと、道往みちゆひとのささやきかわ白壁町しろかべちょう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
書画しょが骨董こっとううことが熱心ねっしんで、滝田たきたさん自身じしんはなされたことですが、なにがなくて日本橋にほんばし中通なかどおりをぶらついていたとき
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ありゃ面白い本ですね。私ゃ大好きだ。なんなら貸して上げましょうか。なにしろ江戸といった昔の日本橋にほんばし桜田さくらだがすっかり分るんだからね」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「電話では言えない。会ってから話す。きょう午後四時きっかりに、日本橋にほんばしのMビルの屋上へきてもらいたい。ぼくは屋上で待っているからね。」
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのさかずきを、ったひとは、日本橋にほんばし裏通うらどおりにんでいる骨董屋こっとうやでありました。そのひとは、まことにおもいがけないものをしたとよろこびました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
日本橋にほんばし磯五いそごに頼まれて、麻布あざぶ十番の馬場屋敷ばばやしき住まい、高音たかねという女に書くのだ。すこし、おどしておきましょう」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大量生産の機運に促されて、廉価な叢書そうしょの出版計画がそこにも競うように起こって来たかと思いながら、日本橋にほんばし手前のある地方銀行の支店へと急いだ。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さうですよ、江戸えどうまれたんですよ。○「江戸えどへんでございますか。女「うまれは日本橋にほんばしの近所ですが観音様くわんおんさまのうしろに長い間ゐたことがありますよ。 ...
深川ふかがわ、浅草、日本橋にほんばし京橋きょうばしの全部と、麹町こうじまち、神田、下谷したやのほとんど全部、本郷ほんごう小石川こいしかわ赤坂あかさかしばの一部分(つまり東京の商工業区域のほとんどすっかり)
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
さてもあやしや車上しやじやうひと萬世橋よろづよばしにもあらず鍋町なべちやうにもあらず本銀町ほんしろかねちやうぎたり日本橋にほんばしにもとゞまらず大路おほぢ小路こうぢ幾通いくとほりそも何方いづかたかんとするにか洋行やうかうして歸朝きてうのちつま
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
抱沖はその子春沂しゅんきで、百俵寄合よりあい医師から出て父の職をぎ、家は初め下谷したや二長町にちょうまち、後日本橋にほんばし榑正町くれまさちょうにあった。名は尚真しょうしんである。春沂ののち春澳しゅんいく、名は尚絅しょうけいいだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それは恋によろしい若葉の六月のある夕方ゆうがただった。日本橋にほんばし釘店くぎだなにある葉子の家には七八人の若い従軍記者がまだ戦塵せんじんの抜けきらないようなふうをして集まって来た。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
昼飯をすませて少し休息すると、わずかばかりの紙幣を財布さいふに入れて出かける。三田みた行きの電車を大手町おおてまちで乗り換えたり、あるいはそこから歩いたりして日本橋にほんばしの四つかどまで行く。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
勤めのようにしております。今は日本橋にほんばし浜町はまちょうの娘の所で、達者で安楽にしている
「いいとも。日本橋にほんばしにいって、医者いしゃ岡部おかべときいてもらえば、すぐわかるよ。」
慶応二年須原屋茂兵衛すはらやもへえ版『袖玉しゅうぎょく武鑑』というのは、大名については記さず幕府官僚のみについての武鑑であるなど、いろいろの種類があり、版元も、日本橋にほんばし南一丁目の上記須原屋茂兵衛は有名だが
武鑑譜 (新字新仮名) / 服部之総(著)
うだらう。日本橋にほんばし砂糖問屋さたうどんや令孃れいぢやうが、圓髷まるまげつて、あなたや……あぢしんぎれと、夜行やかうさけをしへたのである。糠鰊こぬかにしんがうまいものか。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕はいつか何かの本に三代将軍家光いへみつは水泳を習ひに日本橋にほんばしへ出かけたと言ふことを発見し、滑稽に近い今昔こんじやくの感を催さないわけにはかなかつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
旅籠町はたごちょうへ遂に妾宅まで買ってやった沢次さわじほかに、日本橋にほんばしにも浅草にも月々きまって世話をした女があったが、いずれも着痩きやせのする小作こづくりな女であった。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だいぶ遅いようだとは思ったが、座にある国沢君も、行こうと云われるので、三人で涼しい夜の電灯のもとに出た。広い通りを一二丁来ると日本橋にほんばしである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この日は本所ほんじょでは牛の御前の祭礼、神田かんだ日本橋にほんばし目貫めぬきの場所は神田明神みょうじんの祭礼でありました(その頃は山王と明神とは年番でありました。多分、その年は神田明神の方の番であったと思います)
えゝはじたくを出まして、それから霊南坂れいなんざかあがつて麻布あざぶへ出ました、麻布あざぶから高輪たかなわへ出まして、それからしばかへつてて、新橋しんばしを渡り、煉瓦通れんがどほりを𢌞まはりまして、京橋きやうばしから日本橋にほんばしから神田かんだへ出ましてな
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
会員のすうは十七人でしたが、その中でまあ会長といった位置にいるのは、日本橋にほんばしのある大きな呉服屋の主人公で、これがおとなしい商売柄に似合わず、非常にアブノルマルな男で、いろいろな催しも
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たゞる、日本橋にほんばし檜物町ひものちやう藤村ふぢむら二十七疊にじふしちでふ大廣間おほひろま黒檀こくたん大卓だいたくのまはりに、淺葱絽あさぎろ座蒲團ざぶとんすゞしくくばらせて、一人ひとり第一番だいいちばん莊重さうちようひかへてる。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし落語らくごは家族達と一しよに相生町あひおひちやう広瀬ひろせだの米沢町よねざはちやう日本橋にほんばし区)の立花家たちばなやだのへ聞きに行つたものである。殊に度々たびたび行つたのは相生町の広瀬だつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
日本橋にほんばしを通る人の数は、一ぷんに何百か知らぬ。もし橋畔きょうはんに立って、行く人の心にわだかまる葛藤かっとうを一々に聞き得たならば、浮世うきよ目眩めまぐるしくて生きづらかろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日本橋にほんばし大通おおどおりを歩いて三井三越を始めこのへんに競うて立つアメリカ風の高い商店を望むごとに
こんどは、黄金豹は、日本橋にほんばし江戸えど銀行にあらわれました。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、年若な求馬の心は、編笠にやつれた顔を隠して、秋晴れの日本橋にほんばしを渡る時でも、結局彼等の敵打かたきうちは徒労に終ってしまいそうな寂しさに沈み勝ちであった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小六ころくさいはひにしてもなくかへつた。日本橋にほんばしから銀座ぎんざそれから、水天宮すゐてんぐうはうまはつたところが、電車でんしやんで何臺なんだいはしたためにおそくなつたといふ言譯いひわけをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「どこでもいいんだ。京橋か日本橋にほんばしうちならおれには一番便利なんだ。ここの家へ電話でそう言ってくれれば、おれの方ではいつでもいい、見付け次第借りてしまうよ。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
銀座ぎんざ日本橋にほんばしをはじめ、深川ふかがは本所ほんじよ淺草あさくさなどの、一時いちじはつしよきうしよ十幾じふいくしよからあがつたのにくらべれば、やまなんでもないもののやうである、が、それはのちこと
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
我々は露柴を中にしながら、なまぐさい月明りの吹かれる通りを、日本橋にほんばしの方へ歩いて行った。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三人は日本橋にほんばしへ行って買いたいものを買いました。買う間にも色々気が変るので、思ったよりひまがかかりました。奥さんはわざわざ私の名を呼んでどうだろうと相談をするのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
従つて何処どこを歩いてみても、日本橋にほんばし京橋きやうばしのやうに大商店の並んだ往来わうらいなどはなかつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)