厄介やくかい)” の例文
取ても卅二歳少々ちと婆々ばゝすぎますけれども其代りしうと厄介やくかいも子供もなくうちは其女獨りにて若御内儀おかみさんに成ならば其こそ/\貞女ていぢよ御亭主ごていしゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼此かれこれ種々いろ/\すぐれた簡便かんべん方法はうはふかんがへてはたものゝ、たゞ厄介やくかいことにはうしてれを實行じつこうすべきかと名案めいあんたなかつたことです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「待て/\八、お前一人ぢや六づかしい、それに、今夜は何んか厄介やくかいなことが起りさうな氣がしてならねえ、俺も一緒に行つてやらうよ」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
併し周三は、實に厄介やくかいきはまるせがれであツた。奈何なる威壓ゐあつを加へてもぐわんとして動かなかツた。威壓を加へれば加へるほど反抗はんかうの度をたかめて來た。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それも決して幸福な時代ではなく、新らしい規則や馴れない學課に自分をらすといふ厄介やくかいな困難と鬪はねばならなかつた。
元来愛郷心なるものは、県人会の世話にもならず、旧藩主の厄介やくかいにもならない限り、云はば無用の長物である。東京を愛するのもこの例にれない。
元々の楽天家だつたから、彼は普通の授業のほかに少年寮の副寮長などといふ、大抵の者ならば厄介やくかいがる役目までも二つ返事で承諾してしまつた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
いとまともならば彌々いよ/\病人びやうにん伯父おぢ心配しんぱいをかけ、痩世帶やせせたいに一日の厄介やくかいどくなり、其内そのうちにはと手紙てがみばかりをりて、此處こゝこゝろならずもおくりける。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれあにいへ厄介やくかいになりながら、もうすこてば都合つがふくだらうとなぐさめた安之助やすのすけ言葉ことばしんじて、學校がくかう表向おもてむき休學きうがくていにして一時いちじ始末しまつをつけたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しか病氣びやうきうまませるくすり赤玉あかだまではすぐにはなほらなかつた。それでかれはおしな厄介やくかいつもりで、つぎあさはや朋輩ほうばいはこばれた。卯平うへいしぶつたかほむかへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『いえ、あなたは、わたしといふをんなが、あなたの足手纒あしてまとひになる厄介やくかいをんなだとおもつて、そのくせいままで……』
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
あの震災当時をばさんと一緒につぶされ、さいはひにお怪我けがもなくて出て、僕もさうだつたんだが、どこを頼ることもできず、僕の厄介やくかいになつてをる招寿軒だからと思つて
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
ひどく風采ふうさいがわるいので、どうせこの寺に厄介やくかいになつてゐる雲水うんすゐ坊主位のものだらう、と思つて
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
こりゃアちょっと厄介やくかいだね、ねえワトソン君。どうもよほどむずかしい事件らしいよ。訪ねて来たと云う男がイライラしていたと云うことから推察しても、重大な事らしいね。
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
三年前から妻子をつれて佐世保へ出稼でかせぎに来てゐたのである。私は此の人に出逢つたおかげで、あと三里の道を歩かずにすんだ。その上私は当分此の人の家に厄介やくかいになることにさへなつた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「自分は非常に厄介やくかいな職業だと思ふ」と答へた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
きゝ成程なるほど何時いつ迄當院の厄介やくかいなつても居られず何分にも宜しくと頼みければ感應院も承知なして早速さつそくかの片町の醫師方へゆきみぎはなし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あいちやんはしばら立停たちどまり、其兩面そのりやうめんらうとして一しんきのこながめてかんがみました、それがまつた眞圓まんまるだつたので、これははなは厄介やくかい難問題なんもんだいだとおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「いやおとゝなどをつてゐると、隨分ずゐぶん厄介やくかいなものですよ。わたくし一人ひとりやくざなのを世話せわをしたおぼえがありますがね」とつて、自分じぶんおとうと大學だいがくにゐるときかねかゝつたことなど
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
中働なかはたらきのふくかねてあら/\心組こゝろぐみの、奧樣おくさま着下きおろしの本結城ほんゆふき、あれこそはものたのむなしう、いろ/\千葉ちば厄介やくかいなりたればとて、これを新年着はるぎ仕立したてゝつかはされし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
厄介やくかいな、不注意な子だこと! そして、何をしてゐるの? すつかり眞赧まつかになつてまるでおいたをしようとしてゐたやうぢやないの? 窓をけて、何をするつもりだつたの?」
「もう一人厄介やくかいなのがゐますよ。菊屋の主人と無二の仲で、猫又法印ねこまたほふいん佐多田無道軒」
あと厄介やくかいらなくちやらないんだから子供こども面倒めんだうないな間違まちがひだよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
以て取續とりつゞきの出來できるやう頼み申度尤も丸々まる/\貴樣の厄介やくかいかけるといふわけには非ず是はいさゝかなれども何ぞ商賣でも初めさせて下されよと後藤は用意よういの金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このおほきなあんを、たつた一人ひとりあづかつてゐるさへ、相應さうおうほねれるのに、其上そのうへ厄介やくかいしたらさぞ迷惑めいわくだらうと、宗助そうすけすこどくいろほかうごかした。すると宜道ぎだう
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
針鼠はりねずみ針鼠はりねずみたゝかつてゐました、それがあいちやんには、二ひき針鼠はりねずみの一ぴき針鼠はりねずみいやうに使つかつて、たがひ勝負しやうぶあらそつてるやうにえました、只一たゞひと厄介やくかいことには
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
一番厄介やくかいな、正式に這入つてゆく面倒をける方法をお教へしませう。皆さまが食卓しよくたくからお立ちにならない前に、誰もゐらつしやらない、お客間に這入つて行かなくてはなりません。
桂次けいじおもひやりにべてははるかにおちつきてひややかなるものなり、おぬひさむれがいよ/\歸國きこくしたとつたならば、あなたはなんおもふてくださろう、朝夕あさゆふがはぶけて、厄介やくかいつて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「鎌の鼻——か、面白いな。ところで寅吉親分、う暗くなつちや、鎌や鍬で寸法を取つて歩くのも厄介やくかいだ。今晩は親分のところへ厄介になつて、明日の朝うんと早く來て見るとしようか」
かれ野田のだけば比較的ひかくてき不自由ふじいうのない生活せいくわつがしてかれるので汝等わつら厄介やくかいにはらねえでもおれはまだたつかれると、うして哀愁あいしうおほはれたこゝろの一ぱうには老人としよりひがみと愚癡ぐちとがおこつたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その時皆んなが駈け付けて、主人が人手に掛つて死んだと知れては厄介やくかいだから、あとの面倒がないやうに、首の細引を解き、手近の押入にあつた赤い扱帶しごきを出して首に卷き、もう一度自殺にこしらへた。
これがなか/\に厄介やくかいな問題を含んで居さうです。