黜陟ちゅっちょく)” の例文
ただに学堂教務をぶるのみならず学堂出身者の任命の詮衡せんこう及び進退黜陟ちゅっちょく等総てを委任するという重い権限で監督に任じた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
山口駿河するがは監察(目付)の向山栄五郎むこうやまえいごろう(黄村)と共に進み出て、将軍が臣下のことは黜陟ちゅっちょく褒貶ほうへん共に将軍の手にあるべきものと存ずる、しかるに
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この事情にしたがっ維新いしんの際に至り、ますます下士族の権力をたくましうすることあらば、或は人物を黜陟ちゅっちょくし或は禄制ろくせいを変革し、なおはなはだしきは所謂いわゆる要路の因循吏いんじゅんりを殺して
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もはや太史令の役は免ぜられていた。いささか後悔した武帝が、しばらく後に彼を中書令ちゅうしょれいに取立てたが、官職の黜陟ちゅっちょくのごときは、彼にとってもうなんの意味もない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
末広一雄君の『人生百不思議』に曰く、日本人は西洋人と異なり、神を濫造し、また黜陟ちゅっちょく変更すと。
けれども「諺に云う——」とかの長官が述べはじめたとき、もっぱらその人の手によって進退黜陟ちゅっちょくの鍵をにぎられている大主典の堀盛は、例の無表情な顔に立ち戻って先を読んで行った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
一、官には黜陟ちゅっちょく与奪よだつの権あるゆえ、学校の法を厳にし、賞罰を明らかにすべし。その得、二なり。
末広一雄君の『人生百不思議』に日本人は西洋人と変り神を濫造し黜陟ちゅっちょく変更するといった。
故に下等士族は、その下等中の黜陟ちゅっちょくに心を関して昇進をもとむれども、上等に入るの念は、もとよりこれを断絶して、そのおもむき走獣そうじゅうあえて飛鳥ひちょうの便利を企望きぼうせざる者のごとし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
内閣にしばしば大臣の進退あり、諸省府に時々じじ官員の黜陟ちゅっちょくあり。いずれも皆、その局に限りてやむをえざるの情実に出でたることならん、珍しからぬことなれば、その得失を評するにも及ばず。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)