麦稈帽子むぎわらぼうし)” の例文
旧字:麥稈帽子
私は麦稈帽子むぎわらぼうしかぶった妹の手を引いてあとから駈けました。少しでも早く海の中につかりたいので三人は気息いきを切って急いだのです。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
紫のリボンがついだ子供の麦稈帽子むぎわらぼうし、そのリボンに「軍艦海神号」と金文字で書いてあるのを彼に与えたものがある。
そこで小さい太郎は、大頭に麦稈帽子むぎわらぼうしをかむり、かぶと虫を糸のはしにぶらさげて、かどぐちを出ていきました。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
……ひしゃげたっておしくはないわ、薄黒くなった麦稈帽子むぎわらぼうしを枕にして、黒い洋服でさ。
ジャン・ヴァルジャンは正面の壁を黙ってながめていた。ひとりの労働者はユシュルーかみさんの大きな麦稈帽子むぎわらぼうしを頭の上にひもで結わえつけて、日射病にかかるといけねえなどと言っていた。
店は息子むすこゆずって、自分は家作かさくを五軒ほど持って、老妻と二人で暮らしているというのんきな身分、つりと植木が大好きで、朝早く大きな麦稈帽子むぎわらぼうしをかぶって、笭箵びくを下げて、釣竿つりざおを持って
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
車室のゆかの上に目を落したまま、手持無沙汰てもちぶさたに彼の麦稈帽子むぎわらぼうしもてあそんでいた。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)