鴛鴦おし)” の例文
北浦には波がよせながら南の浦は魚の息さえみえるほど澄んでいる。鴨の群はまだか、鴛鴦おしはと思って眺めてもそれらしい影もみえない。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
夫婦してひとつコップから好きな酒を飲み合い、暫時しばしも離れぬので、一名鴛鴦おしの称がある。夫婦は農家の出だが、別にたがやす可き田畑もたぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かもめ鴛鴦おしやそのほかさまざまの水鳥のいる前のロハ台にかれはまた腰をおろした。あたりをさまざまな人がいろいろなことを言ってぞろぞろ通る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼女が世の幸福を捨てても岸本にしたがおうとしているのは、鴛鴦おしの契りもうらやましくないと彼女の歌に言いあらわしてある通りだ。彼女は結婚を断念してかかっているのだ。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とすらりと開ける、とみどりの草に花の影を敷いて、霞に鴛鴦おしの翼がただよう。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きじ、山鳥、兎、さぎ五位鷺ごいさぎ鴛鴦おし、熊、猿、白鳥、七面鳥、にわとり
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
山川ニ 鴛鴦おしフタツ居テ………
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
いとし、なつかし、鴛鴦おし二つ
やきもの読本 (旧字旧仮名) / 小野賢一郎(著)
むべきかな、島はもみじして鴛鴦おしのごとくにみえる。この島は国のはじめのころはたぶん一羽の鴛鴦だったのであろう。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
鴛鴦おしが生れた頃はいな
やきもの読本 (旧字旧仮名) / 小野賢一郎(著)
まっ暗な寒い杉の森のなかで北浦のほうを眺めて鴛鴦おしや鴨のくるのをまっている。やがて一羽の鴨が西のほうからさっとおろしてきて水につき入った。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)