鬱気うっき)” の例文
旧字:鬱氣
瀟々しょうしょうと外は間断なき雨の音だった。こんな時は鬱気うっきを退治して大いに快笑するに限ると、龐徳は友を引きとめて酒など出した。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お角も、そこで、今までの鬱気うっきが晴れて、いい気持になりました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「出陣以来、酒をつつしんで、陣中では一滴も飲まなかったが、今夜は、旧友幹兄のために、心ゆくまで飲むつもりだ。諸将も客にすすめて、共に鬱気うっきをはらすがいい」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近くの百姓の子や侍長屋の子らも交じって、まッ裸な童の群れが、れな渓流に、水を見つけて、ぴちぴち遊び跳ねているのをのぞくと、彼の鬱気うっきも、いっぺんに飛んでいた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「や。どなたかと存じたら……曲直瀬まなせ殿か。なんの光秀とて、徒然つれづれの日もおざる。数日来、坂本の城に滞在中とて、山でも少しわたりあるいたら、梅雨つゆじめりの鬱気うっきも少し散じようかと思うて」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんでもいいから、汗と鬱気うっきを出してしまうんだ。……そうだ」と、後ろを仰いだ。里の者が粘土ねんどでも採った跡であろう、崖の中腹から上へ真っすぐに二丈ばかり山肌がぎ取られてあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
努めて、諸将の神心を、長陣の鬱気うっきを、散ぜんとするもののように。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長陣の鬱気うっきばらしに、ひと喧嘩、血の雨も降りそうな時分である。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)