高禄こうろく)” の例文
旧字:高祿
「彼はいつも云っている、あれで誰にも恥じず、平気で高禄こうろくをいただいているとすれば……いや、おれにはそのあとは云えない」
はたし状 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一切をあきらめておりましたが……ただ今、甲州へ随身なせば、生命も助け、高禄こうろくもやるというおことばを、耳に聞くやいな、急に死ぬのが怖くなりました。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武家の妻女ならば、まず二百石どころから上の高禄こうろくをはんだものにちがいない。いずれにしても、品の上等、着付けの凝ったところをみると、相当由緒ゆいしょある身分の者です。
ほかの方々は高禄こうろくを賜わって、栄耀えようをしたのに、そちは殿様のお犬牽きではないか。そちが志は殊勝で、殿様のお許しが出たのは、この上もないほまれじゃ。もうそれでよい。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
不肖ふしょう宗治は、その毛利家に属し、碌々ろくろくすなき身を、多年七千石の高禄こうろくをたまわり、一族みな恩養にあずかって、今日この変にあたり、国境の守りを命ぜられたこと
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よきことに二百石という高禄こうろくを頂戴いたしたよし奇怪なり、元来畠山に勝ちしも詐略を用いたと聞く、これまことの勝にあらず、二百石などという手柄ではあるまいが!
だだら団兵衛 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ほり一つ向こうへ越した市ガ谷本村町のかど地面に、それなる不逞漢ふていかん弥三郎が、今、旗本真柄まがら弥三郎に成りすまして、そしらぬ顔に高禄こうろくの五百石を私しているということがわかりましたものでしたから