高札場こうさつば)” の例文
これに先立つこと幾日、宇津木兵馬は同じ道を、すでに飛騨の高山の町に入って、一の町二丁目の高札場こうさつばの前に立っておりました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぶらぶらのぼってその辻まできてみると、椿とやぶに埋まって西行さいぎょう法師の歌碑うたぶみがあり、それと並んで低い竹垣根をい廻した高札場こうさつばがある。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
瑞見と寛斎とは歩きながら、こんな言葉をかわして、高札場こうさつばの立つあたりから枯れがれな太田新田の間の新道を進んだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黒木の門には小庇こびさしの付いた窓があり、昔はここで訴願などを受付けたという。また門の脇には高札場こうさつばがあって、現在でも領主加賀様の制札せいさつが掲げられる。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
浅草橋の高札場こうさつばを、私は幾度も小説に書いた。町々には、木戸があり、自身番があり、真夜中でも手をあげればタクシーが集まってくる現代とは、わけが違う。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
追分おいわけ高札場こうさつばのそばの土手下で……」
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
このたびの大火にあたって、いつぞや、宇津木兵馬が触書ふれがきを読んだ高札場こうさつばのあたりだけが、安全地帯でもあるかのように、取残されておりました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その晩の九兵衛の行動というものこそ、神出鬼没というやつでしょう、いま鼻寺を出たかと思うと、もうその姿が城下の高札場こうさつばの辻に立っている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
互いに競い合う村の人たちの声は、荒町のはずれから馬籠の中央にある高札場こうさつばあたりまで響けた。こうなると、庄屋としての吉左衛門も骨が折れる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
通り一丁目のさわ屋三郎兵衛の娘のお琴が、今日と言う日の真昼に、逆立さかだちをして日本橋を渡ると言うので、高札場こうさつばの前から、蔵屋敷の前へ湧き立つような騒ぎですよ
半蔵らは八十余里の道をたどって来て、ようやくその筋違すじかいの広場に、見附の門に近い高札場こうさつばの前に自分らを見つけた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すえろよ。さっきの高札場こうさつばで、てめえはあれを読んでいなかったのか。楠木の首一ツには、一躍、地頭じとうさまにもなれるほどな恩賞がかかッてるんだ。そんな運を
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よく高札場こうさつばにあるあの立札なのであります。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
馬籠の宿場の中央にある高札場こうさつばのところには物見高い村の人たちが集まった。何事かと足をめる奥筋行きの商人もある。馬から降りて見る旅の客もある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なつかしい故郷沂水きすい県は目の前にある。そしてここは町の西門だった。人だかりがしているのは、県城のどこにもあるおきまりの高札場こうさつばだナと、李逵も何気なく、じっていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに人だかりのする高札場こうさつばにはすでに長州征伐のおしょが掲げられていた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)