けん)” の例文
旧字:
祖父は相当な喧屋やかましやのようであった。煮物の味加減なども気難しかったらしく、自分で台所に出てきて鍋の蓋を取ってけんしていたのを、私も見かけたことがある。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
午後四時半体温をけんす、卅八度六分。しかも両手なほひややか、この頃は卅八度の低熱にも苦しむに六分とありては後刻のくるしみさこそと思はれ、今の内にと急ぎてこの稿をしたたむ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「そりゃもう、皆さんの成さる事業ことですから、私が何を言おうでは有りませんが……何時まで待ったらけんが見えるというものでしょう。どうも吾夫やどの話ばかりでは私に安心が出来なくて……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
時計を出しては一日にみゃくを何遍となくけんして見る。何遍験しても平脈へいみゃくではない。早く打ち過ぎる。不規則に打ち過ぎる。どうしても尋常には打たない。たんくたびに眼を皿のようにしてながめる。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)