駁論ばくろん)” の例文
ところが、どうしてそれどころか、あれは心理学者ミュンスターベルヒに、いやハーバードの実験心理学教室に対する駁論ばくろんなんだよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
三宅は、云い込められた口惜しさを、うかして晴そうと、駁論ばくろんの筋道を考えているらしく口の辺りをモグ/\させていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
明慧みょうえ上人の駁論ばくろんを読んだ者は、また必ず、もういちど法然上人の選択集せんじゃくしゅうを読んで、両方の教理を比較してみた。その結果
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、幾度かこんな事を重ねて、高木氏の最後の駁論ばくろんが済むと、氏はくるりと蓄音機の方へ向き直る。
ところが専門家側では博士の駁論ばくろんを見て、あっけにとられてしまったものだ。
或る探訪記者の話 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
批評家ひひやうかがそれをうますぎると云つた爲めに、氏は巧すぎるといふ事が何故なぜいけないのだと云つたやうな駁論ばくろんを書いて居られましたが、たしかに巧すぎるといふ事丈けは否定ひてい出來ないと思ひます。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
僕は谷崎潤一郎氏に会ひ、僕の駁論ばくろんを述べた時、「では君の詩的精神とは何を指すのか?」と云ふ質問を受けた。僕の詩的精神とは最も広い意味の抒情詩である。僕は勿論かう云ふ返事をした。
彼の心是非論カズイズチック剃刀かみそりのごとくとぎすまされて、もはや自分自身の内部に意識的な駁論ばくろんを見出すことができなかった。けれど、いざという段になると、彼はただもう自分を信じることができなかった。
ひとり六角中納言親経ろっかくちゅうなごんちかつねは、その罪を決める仁寿殿の議定ぎじょうでそれが公明の政事まつりごとでないことを駁論ばくろんした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)