馬繋うまつな)” の例文
穀物、獣皮じゅうひうるし、織物などあらゆる物と物が交易されていた。馬市も立っている。鹿毛かげ、栗、月毛、黒などが何十頭も馬繋うまつなぎに首をならべていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六月の陽が照りはえた。ま新しい冠木門かぶきもんの柱にさげた標札には、大きな字で開拓使と書き出されている。墨痕ぼっこんあざやかにのびのびと書かれた文字であった。右手には馬繋うまつなぎ場も出来ている。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ヒラリと、降りて、馬繋うまつなぎのさくへ、駒の手綱をゆわいつけていると、物蔭から、ばらばらと駈け寄って、彼の足もとに、ぴたりと、両手をついた老人があった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徒歩かちでは落ちまい。すると馬繋うまつなぎへ駈けつけたに違いない。だが、たくさんな幕と乱軍の営内では、どこが敵の馬繋ぎ場か、ちょっと見当もつかないのである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ずっと町端まちはずれの、まだ十里も先だが、軒先に馬繋うまつなぎのくいを打ち並べてある土蔵二階の家さ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひさしの先には「馬繋うまつなぎ」と呼ぶ棒杭ぼうぐいが四、五本打ち込んであり、この山中のしかも深夜に、まだ客があるのか、土間のうちからパチパチと火のはぜる音にじって、粗野な人声が洩れてくる。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呶鳴っておいてから、軒先の馬繋うまつなぎに牛をつなぐ。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)