食指しょくし)” の例文
右手の食指しょくしを口に突っこみ、ややうつ向き加減に戸によりかかって、体をゆすぶっている。ふだん次郎の眼にうつる俊三とはまるでちがう。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
此孔雀の舌の料理は往昔おうせき羅馬ローマ全盛のみぎり、一時非常に流行致しそろものにて、豪奢ごうしゃ風流の極度と平生よりひそかに食指しょくしを動かし居候おりそろ次第御諒察ごりょうさつ可被下候くださるべくそろ。……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
がやがてそれをつまみ上げると、ちょうど何かの骨について講議をしている大学の教授がよくやるように、細長い食指しょくしでその上を軽くたたいて、言葉を続けた。
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
今しがた剰銭つりせんにとった永楽銭が一枚、右手の食指しょくし拇指ぼしの間に立てて、ろくに狙いも定めずピュウと投げると、手練は恐ろしいもので、身を投げようとする男の横鬢よこびんをハッと打ちます。
家内では趣味の高いそして意志の弱い良人おっとを全く無視して振る舞ったその母の最も深い隠れた弱点を、拇指ぼし食指しょくしとのあいだにちゃんと押えて、一歩もひけを取らなかったのも彼女である。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)