音声のど)” の例文
旧字:音聲
「お師匠さん、あんた、これからその音声のど芸妓屋げいこやかどで聞かしてお見やす。ほんに、人死ひとじにが出来ようも知れぬぜな。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どこからともなく蹣跚よろばい出てくるお艶は、毎日決まって近江屋の門近く立って、さて、天の成せる音声のどに習練の枯れを見せて、往きし昔日むかしの節珍しく声高々と唄い出でる。
それから身体からだが生れ代ったように丈夫になって、中音ちゅうおん音声のどに意気なさびが出来た。時々頭が痛むといっては顳顬こめかみ即功紙そっこうしを張っているものの今では滅多に風邪かぜを引くこともない。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「どうも、あんまり結構な話でもねえ。面白くねえだろうから止めにして、台所には白鳥はくちょうが一本おったっている。熱燗あつかんをつけて、これで中々なかなか好い音声のどなんだ。小意気な江戸前の唄でもきかせようか」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)