鞅掌おうしょう)” の例文
勝、大木、大隈の諸政事家はこの間もっぱらその主任の政に鞅掌おうしょうし、廟堂の大議は多くかの人々をもって決定せしにあらざるか。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
警察獄吏の事務に鞅掌おうしょうするようになっても、なおいくぶん往時の声聞僧の名残りを留めていたものと言わねばならぬ。
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
今天下の士君子、もっぱら世事せいじ鞅掌おうしょうし、干城かんじょうわざを事とするも、あるいは止むをえざるに出ずるといえども、おのずからその所長所好なからざるをえず。
中元祝酒の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
官事に鞅掌おうしょうして居ながら、その好意と悪意とを問わず、人の我真面目しんめんもくを認めてくれないのを見るごとに、独り自ら悲しむことを禁ずることを得なかったのである。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
シカモ兵乱ノなお飢饉ききんヲ以テス。県務ニ鞅掌おうしょうシイマダ及ブニいとまアラズ。幸ニシテ子重ガコノ挙アリ。故ニ辞スルニ多事ヲ以テセズ。筆ヲイテ巻首ニ叙ストイフ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
『新古今』撰者はそうした中から更にえらばれて、通具・有家・定家・家隆・雅経・寂蓮の六人が仰せをこうむり、事務は万事良経が鞅掌おうしょうしたと『増鏡』にも記されている。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
京都清遊の後、居士はたちまち筆硯ひっけん鞅掌おうしょうする忙裡ぼうりの人となった。けれどもかんを得れば旅行をした。「旅の旅の旅」という紀行文となって『日本』紙上に現われた旅行はその最初のものであった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ここにおいてこころざしを改め、聖堂の試験に応じて及第するや狂歌の名を後進の真顔六樹園まがおろくじゅえんにゆづりて幕吏ばくり(支配勘定)となり事務に鞅掌おうしょうするのかたわら旧記を閲覧して『孝義録こうぎろく』の編纂へんさんをなせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)