はれ)” の例文
その夜なかから降り出した雨が、暁になるとからりとはれあがった。そしてお島が起出した頃には、父親はもうきちんと着物を着て、今にも立ちそうな顔をして、莨をふかしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
霜ははれに伴う。霜の十一月は、日本晴にっぽんばれの明るい明るい月である。富士は真白。武蔵野の空は高く、たゝけばカン/\しそうな、碧瑠璃へきるりになる。朝日夕日が美しい。月や星がえる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
など少しく氣をはれやかにして我面を見て面白き事を語り聞せ給はざる。尚もだして居給ふか。若し言ふべきことなくば、わがこの新しききぬをだにめ給へ。好く似合ひたるにあらずや。
去らむとすればはれる。もとの路を取りて、昨夜野宿せし跡を左に見下し、前に見し北鎮岳を左にし、終に後にして、雲の平を南に下れば、熊ヶ岳崛起して、十町四方の火口を控えたり。
層雲峡より大雪山へ (新字新仮名) / 大町桂月(著)
朝霧てうむいまだはれず。水車の処に舟をよせて観たり。行々ゆき/\て右淀の大橋を見、左に桂川の落口を見て宮の渡の辺に到て、きりはれ日光あきらかに八幡の山平瀉ひらかたの民家一覧に入て画がけるがごとし。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
汝はわがためにそのはれやかなるそらを打明けて何の隱すところもなし。汝はそよ吹く風の優しきを送りて、我額我唇に觸るゝことを嫌はず。我は汝が美しさを歌はん、汝が我心を動す所以ゆゑんを歌はん。
急いで歩いて来たので、少し赤みを帯びている顔から、曇のない黒い瞳が、珍らしい外の世界を覗いている。大石はこの瞳の光を自分の顔に注がれたとき、自分の顔の覚えずはれやかになるのを感じた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
はれ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)