雌蕊しずい)” の例文
代助はこごんで、花の中をのぞき込んだ。やがて、ひょろ長い雄蕊ゆうずいの頂きから、花粉を取って、雌蕊しずいの先へ持って来て、丹念に塗り付けた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
花茎かけいにはかならずその途中に狭長きょうちょうほうがほとんど対生たいせいしていており、花には緑色の五萼片がくへんと、色のある五花弁かべんと、五雄蕊ゆうずいと、一雌蕊しずいとがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
女の肉体は肩と頸足えりあしと、腰とはぎとの形によって、艶っぽくもなれば野暮ったくもなる。お菊の肩は低く垂れていて、腕が今にも脱けそうであった。頸足の白さと長さとは雌蕊しずいを思わせるものがある。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
他花たかの花粉で、自分の花の受精作用を行わんがために、このサクラソウの花は雄蕊ゆうずいの位置に上下があり、雌蕊しずいの花柱に長短を生じさせているのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
富士あざみの紫の花が、花冠を低く水へ垂れ、姿鏡を写していた。燃え立つような草牡丹は、柳蒲公英たんぽぽの黄金色の花と、肩を並べて咲いていた。そうして小さい一匹の羽虫が、雌蕊しずいを分けて飛び出した。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
雌蕊しずいは一本で、緑色の子房しぼうとほとんど同長な花柱かちゅうが上に立っており、そのいただき花頭かとうがあって花粉を受けている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
雌蕊しずいのようにも白いうなじを、抜けるほど前へ伸ばすようにしたが
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)