随処ずいしょ)” の例文
旧字:隨處
何にも停滞ていたいしておらん。随処ずいしょに動き去り、任意にんいし去って、塵滓じんしの腹部に沈澱ちんでんする景色けしきがない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だが、あたくしは随処ずいしょに、底に秘めた鋭いものを感じる。柏木右衛門かみが、源氏の君の、見るとしもない一瞥いちべつを、心の底にまで感じて神経衰弱になって死んでしまう気の咎め——
病気の為に信心して幸にゆれば平気で暴利をむさぼって居る者もある。信徒の労力を吸ってえて居る教師もある。然しこのせちからい世の中に、人知れず美しい心の花を咲かす者も随処ずいしょにある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
春、夏、秋、冬、朝、昼、夕、夜、月にも、雪にも、風にも、霧にも、霜にも、雨にも、時雨にも、ただこの路をぶらぶら歩いて思いつきしだいに右し左すれば随処ずいしょに吾らを満足さするものがある。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そして、随処ずいしょ弔旗ちょうきが垂れていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)