除物のけもの)” の例文
なお他にある総ての墓とは、ほとんど除物のけもののようにされて、この墓だけが一つ、ここに置かれてあることも異様です。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
子爵と富山との交際は近き頃よりにて、彼等のいづれも日本写真会々員たるにれり。おのづから宮の除物のけものになりて二人の興にれるは、想ふにその物語なるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
親が居ないと侮って、ちょいと小遣でもあるてあいは、除物のけものにしていじめるのを、太腹ふとッぱらの勝気でものともせず、愚図々々いうと、まわらぬ舌で、自分が仰向あおむいて見るほどの兄哥あにいに向って、べらぼうめ!
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
座敷にはくるしめる遊佐と沈着おちつきたる貫一と相対して、莨盆たばこぼんの火の消えんとすれど呼ばず、彼のかたはら茶托ちやたくの上に伏せたる茶碗ちやわんは、かつて肺病患者と知らでいだせしを恐れて除物のけものにしたりしをば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)