間毎まごと)” の例文
ゆるい一風ごとに、塀の紅梅や柳をこえて、大川口の海の香は、銀襖ぎんぶすまや絵襖などの、間毎まごと間毎まで、いっぱいに忍びこんで来る。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逃げられぬように手早く二人の足に一刀を切付け、それから縁側の両人を目がけて其の場に切伏せ、当の敵たる蟠龍軒は何処いずくにありやと間毎まごと々々を尋ねますと
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
白ペンキ塗の厚縁あつぶち燦々きらきらで、脾弱ひよわい、すぐにもしわってはずれそうな障子やからかみしきりの、そこらの間毎まごとには膏薬のいきれがしたり、汗っぽい淫らな声がえかけたりしている。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
広間の方ではまだ相当の人声であるが、その半分の、人なき間毎まごとの寂しさは急に増した。
箕輪みのわの奥は十畳の客間と八畳の中のとを打抜きて、広間の十個処じつかしよ真鍮しんちゆう燭台しよくだいを据ゑ、五十目掛めかけ蝋燭ろうそくは沖の漁火いさりびの如く燃えたるに、間毎まごとの天井に白銅鍍ニッケルめつきの空気ラムプをともしたれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
己は黒ん坊に案内させて、別荘の間毎まごとの戸を開けさせて見た。併し己を不思議な目に合せて、続いて老人が手紙で注意してくれたやうな運命に陥いれた、例の部屋は見附からなかつた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
それは非常に難儀な仕事であったが、スリッパの脱いである、間毎まごとふすまを、臆病な泥棒よりも、もっと用心をして、ソッと細目に開いては調べて行く内に、遂に目的の部屋を見つけ出すことが出来た。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこにもここにも底光そこびかりがある、低くて暗いのは必ずしも浅くて安っぽい意味でない、というような感じも幾分か出て来て、そうしておもむろに間毎まごとふすまや天井などについて説明を求めてみると
宿の間毎まごとは、浮世の縮図のように、さまざまです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)