長恨歌ちょうごんか)” の例文
白楽天はくらくてんが、玄宗皇帝げんそうこうてい楊貴妃ようきひとの情事を歌った長恨歌ちょうごんかの一節は、そのままわが平安朝の貴族心理をいっているような趣きがある。
玄宗げんそう皇帝と楊貴妃ようきひの恋を題材にした白楽天の長恨歌ちょうごんかを、亭子院ていしいんが絵にあそばして、伊勢いせ貫之つらゆきに歌をおませになった巻き物で、そのほか日本文学でも、支那しなのでも
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そしてね、おっり出した本を引きよせて見ると、大好な長恨歌ちょうごんかの、夕殿蛍飛思悄然という句が、すぐあったじゃないの。だから、それ書いて頂戴ちょうだいって、桜津に頼んだの。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
脂粉や珠玉も泥土にまみらせて惜しむ眼もなかったという——長恨歌ちょうごんかのうちにもある漢王の貴妃きひとの長安の都を落ちるさまにも似て、道はすこしもはかどらなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女院と法皇の関係も、侍者とのあいだも、仏者的口吻こうふんの聖教そのまま、つまり原作者の該博がいはくな仏典の演繹えんえきと、長恨歌ちょうごんか左伝春秋さでんしゅんじゅうなどに影響された文体そのもので終わっている。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
客の佐渡は、白楽天の一句を想い起し、そして長恨歌ちょうごんかにうたわれた楊貴妃ようきひと漢王との恋など、声なき嗚咽おえつを聞く心地がしていたが——ふと、眼はそこに懸けてある一聯の書に、はっと打たれた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海上の蓬莱宮ほうらいきゅう中にその花貌雪膚かぼうせっぷ仙子せんしを見出して、帝の意をつたえたというあの長恨歌ちょうごんかうちにある、貴妃の驚愕と喜びの章が——そのまま自分のことでもあるように、お通は茫然として、短い手紙を
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)