鏖殺みなごろ)” の例文
「その怪談が大変なんで、一と月も前から成瀬屋の一家を鏖殺みなごろしにするという蝙蝠冠兵衛の手紙が三本も来ているじゃありませんか」
そしていよいよ今夜こそ、生不動の仕返しに、笊組の目星い奴等を、鏖殺みなごろしにしてくりょうと、いきまきながら、杯を廻している。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その飛降り自殺者こそ、外ならぬ川手氏一家鏖殺みなごろしの共犯人、例の眼帯の男であることが分ったからだ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
成程これは残酷だ! 若しも彼等がお通夜帰りに婚礼を訪れたとしたら、担ぎやの頑固ぢぢいは家の子郎党に棍棒を握らせて鏖殺みなごろしにするまでは腹の虫がおさまらないに相違ない。
村のひと騒ぎ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
長州の大村益次郎が、維新の後になって、小栗の立てた策戦計画を見て舌を捲いて、これが実行されたら薩長その他の新勢力は鏖殺みなごろしだ! と戦慄せんりつしたというのも嘘ではあるまい。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その頃、一つの電波が白軍の陣営から送られ、それであのロボット蠅の翅はたちまち振動を始めたのだ。その翅からは戦慄せんりつすべき殺人音波が発射され、室内の一同を鏖殺みなごろしというわけだった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
其実国土侵略の目的を腹に持つてゐる狼の群を鏖殺みなごろしにする事に依つて、間接に徳川の威勢を天下に示し、同時に自分の反照を眼のあたり見る事が出来る事を此上もなく面白がり、喜んだ。
ソコで色々な策士論客忠臣義士が躍気やっきとなって、上方かみがたの賊軍が出発したから何でもれは富士川ふじがわで防がなければならぬとか、イヤうでない、箱根の嶮阻けんそよっ二子山ふたこやまの処で賊を鏖殺みなごろしにするが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いまに青梅屋を鏖殺みなごろしにして男の一分を立ててやる。
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「この寮にいる御曹子の新九郎と、女あるじの女郎を出せ、山手組が出向いて来たのだ。かくまい立てする分には片っ端から鏖殺みなごろしだぞ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところへ同じ丘の上から十四名の騎馬の者が現れてきて、二人の者を渡さなければ鏖殺みなごろしにしてしまふと敦圉いきまいて罵り騒いでゐる。そこへ又九名の者が駈けつけてきて、追手の数は二十三名となつた。
「成瀬屋の鏖殺みなごろしだ」
が、一角は先に笊組の諜者いぬとなって、隅田川で生不動の身内を鏖殺みなごろしにしようとした企みの手引きをしたことがあるため、なるたけ顔を見せないようにしているのだ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「成瀬屋の鏖殺みなごろしだ」
もしまた、命に従わねば、信長様にも、これまでとあって、根本中堂、山王七社、三千の坊舎、峰谷々をも焼きつくし、一山のともがら鏖殺みなごろしになさるべしとの御決意である。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)