鍵孔かぎあな)” の例文
二人が見戍みまもっているうちに、法水は長い糸を用意させて、それを外側から鍵孔かぎあなくぐらせ、最初鍵の輪形の左側を巻いてから、続いて下からすくって右側を絡め
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
勝手元の引戸ひきどに、家の割には、たいへん頑丈がんじょうで大きい錠前じょうまえが、かかっていた。わしは、懐中ふところを探って、一つの鍵をとり出すと、鍵孔かぎあなにさしこんで、ぐッとねじった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
看護婦たちのなかにはドアも開けずにその鍵孔かぎあなから彼の様子を覗いて行くものもあった。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
鍵孔かぎあなを通してスパイすることに慣れていて、それによって、君たちが実際に見る小さなことから大げさにあやまって全体を推量するというものの見かたを身につけているんだよ。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
学士はそこで渋々しぶしぶとポケットから鍵を出すと戸口の鍵孔かぎあなに入れ、ガチャリと廻して扉を開いた。そこには思いがけなくもピンク色のワン・ピースを着た背の高い若い婦人が立っていた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
現場のドアは、鉄板のみで作られた頑丈な二重ドアで、その外側には鍵孔かぎあながなかった。というのは、万が一クローリン瓦斯ガスが発生した際をおもんぱかったからで、むろん開閉は内側からされるようになっていた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)