鍍金めつき)” の例文
作者の苦痛にも鍍金めつきをした苦痛を往々にして私は見ることがある。また知らないがために苦痛にもあらざることを強いて苦痛にしてゐるものを見ることがある。
心理の縦断 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
何氣なしに取上げた銀鍍金めつきの石鹸函は指に氷着くつつく、廊下の舖板しきいたが足を移す毎にキシ/\と鳴く、熱過ぎる程の湯は、顏を洗つて了ふまでに夏の川水位に冷えた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
私がそれを言つたところで、所詮は、一夜勉強の恥づかしい軽薄の鍍金めつきである。それらに就いて、くはしく知りたい人は、その地方の専門の研究家に聞くがよい。
津軽 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
「——この泥だよ、八、守り刀の鞘に附いて居たのは。壁のつくろひか何にかに使つた荒木田あらきだが、雨や撒き水に解けて、此邊一面の庭に鍍金めつきしたやうになつて居たんだ」
日は「マルクス」寺の星根の鍍金めつきせるさきと寺門の上なる大いなる銅馬どうめとを照して、チユペルス、カンヂア、モレア等の舟の赤檣せきしやうの上なる徽章ある旗は垂れて動かず。
そして私は、鍍金めつきした字で、「ザ・ロチスター・アァムズ館」とあるのを讀んだ。私の胸は躍つた。もう既に私は私の主人の領地にゐるのだ。だが再び心は沈んだ。
それは贋物や鍍金めつきではなかつた。むしろ余りにほんものすぎるくらゐであつた。牢固として微動もしない感じであつた。それだからやりきれないのだと哲学者は言つた。
北海道では今、群來の二字をてるが、古は漏の字を充てゝゐる。にしんのくきる時は漕いでゐる舟の櫂でも艫でも皆、かずの子を以てかずの子鍍金めつきをされてしまふ位である。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「これや、なんや。ようでけとるけど、鍍金めつきやな」
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
銀の鍍金めつきをして輝き
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
何気なしに取上げた銀鍍金めつき石鹸函しやぼんばこは指に氷着くつつく、廊下の舗板しきいたが足を移す毎にキシ/\と鳴く、熱過ぎる程の湯は、顔を洗つて了ふまでに夏の川水位に冷えた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
我が暮らす日の長く又重きことは、ダンテが地獄にて負心ふしんの人のるといふ鍍金めつきしたる鉛の上衣の如くなりき。夜に入れば、又我禁斷の果にひ寄りて、その惡鬼に我妄想の罪をめらる。
『純金に鍍金めつき』でもした方がいゝだらう。分りました、あなたの頼みは承知しました、——しばらくね。銀行へ云つてやつたことは取消します。だが未だ何も欲しいものを云つてはゐませんね。
「無筆は鍍金めつきだつたのか、そいつは知らなかつた」