鍋焼饂飩なべやきうどん)” の例文
旧字:鍋燒饂飩
確められて文三急にしおれかけた……が、ふと気をかえて、「ヘ、ヘ、ヘ、御膳も召上らずに……今に鍋焼饂飩なべやきうどんでもくいたくなるだろう」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
鍋焼饂飩なべやきうどんの荷の間からへりのとれかゝった広蓋ひろぶたを出し、其の上に思い付いて買って来た一升の酒にさかなを並べ、其の前に坐り
道端に荷をおろしている食物売たべものうりあかりを見つけ、汁粉しるこ鍋焼饂飩なべやきうどんに空腹をいやし、大福餅や焼芋に懐手をあたためながら、両国橋をわたるのはほとんど毎夜のことであった。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ただ、鍋焼饂飩なべやきうどんをお客に喰わせていると、松の蔭から黒い人影が現われて、そのお客もひっくり返ったが自分も無暗むやみにここへ逃げ込んだというだけの要領でありました。
寒い夜などはひそかに蕎麦粉そばこを仕入れておいて、いつの間にかている枕元まくらもとへ蕎麦湯を持って来てくれる。時には鍋焼饂飩なべやきうどんさえ買ってくれた。ただ食い物ばかりではない。靴足袋くつたびももらった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鍋焼饂飩なべやきうどん…」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その近所にべつだん斬られた人もありませんし、鍋焼饂飩なべやきうどんも夜明けになって無事に帰ったし、七兵衛もまた明るくなる時分には、どこへ行ったか姿が見えなくなりました。
まアういう訳で取附く事が出来ねえから、鍋焼饂飩なべやきうどんと化けてると、川口町に春見うじとあって河岸蔵かしぐらみんな君のだとねえ、あのくれいになったら千円ぐらいはくれても当然あたりめえ
今じゃア毎夜鍋焼饂飩なべやきうどん売歩うりある貧窮然ひんきゅうぜんたる身の上だが、つい鼻の先の川口町に君がれだけの構いをして居るとは知らなかったが、今日はからず標札を見て入って来たのだが
巳「鍋焼饂飩なべやきうどんが荷をおろし始めた処で転覆えしたと云うから」